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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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古代エジプトの少年王ツタンカーメンの…

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 古代エジプトの少年王ツタンカーメンの王墓発見につきまとう都市伝説が「ファラオ(王)の呪い」だ。約100年前、世紀の大発見に欧米の新聞が報道を競う中、発掘の出資者がエジプトで急死したのが呪い伝説のきっかけとされる▲実際には感染症が死因だったが、新聞各紙は「王墓の中に呪いの文句が記されていた」といった虚偽が交じった報道を続けた。シャーロック・ホームズの生みの親である作家のドイルも古代の秘術説を披露している▲王墓を発見した英国人考古学者のカーターは「滑稽(こっけい)なつくり話」と一蹴し、64歳まで生きた。発掘に立ち会った25人の西洋人の平均寿命は約70歳という研究もある。しかし、なかなか伝説は消えない。3400年も前に黄金のマスクに象徴される高い技術を持っていた古代文明の神秘性も影響しているのだろう▲カイロでは3日、ファラオと女王のミイラ計22体を中心部から郊外の博物館へ移すパレードが行われた。それを前にエジプトではスエズ運河での貨物船座礁や工場火災、列車事故、ビルの倒壊が相次ぎ、「ファラオの呪いだ」と移送を批判する声が出た▲しかし、パレード後には朗報が飛び込んできた。ツタンカーメン王墓に近い南部ルクソールのナイル川西岸で、王が生きた時代のものとみられる大規模な都市遺構が見つかったのだ▲王の葬祭殿を探す過程で発見したというから「ファラオの贈り物」か。古代文明の神秘性をはがし、真実に迫る研究につながることを期待したい。

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