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米国とのすり合わせを踏まえ、対中外交をどう展開するのか。日本の戦略が問われる。
訪米した菅義偉首相がバイデン米大統領と会談した。両首脳による初めての対面会談である。
共同声明では「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調し、中台の争いの「平和的解決」を促した。
台湾情勢が共同文書に盛り込まれるのはほぼ半世紀ぶりだ。中国の軍事的な圧力をけん制する「明確なメッセージ」という。
首相は会談後の共同記者会見で、日米同盟の抑止力を高める必要性を指摘し、「日本の防衛力強化への決意」を表明した。
重要なのは、高まる緊張をどうやって制御するかだ。
中国はさっそく反論している。台湾は国内問題であり、「干渉は許されない」と反発し、日米の動向を強く非難した。
日本は、中台を不可分の領土とする「一つの中国」を、「理解し、尊重する」との立場だが、「対話による解決」を求めている。
中国の脅威に対し、米国の抑止力に頼る日本が歩調を合わせ、慎重な行動を促そうというのは、理解できる。
ただし、米中間の対立が先鋭化することはだれも望んではいない。台湾周辺で不測の事態が起きて紛争になれば、最も影響を受けるのは、ほかならぬ日本だ。
首相は「中国と安定的で建設的な関係を構築する」と言う。だが、これから中国にどうアプローチするのかは、明確ではない。
首相自らが、隣り合う中国が外交的、経済的に重要な国だというメッセージを送るべきだろう。
人権や法の支配、貿易ルールが大事だと訴えるのは重要だ。それは中国と共存するためであり、排除を目的とすべきではない。
中国と協力できる領域を広げることも必要だ。北朝鮮の核・ミサイルや拉致問題は、中国の影響力なくしては解決できまい。
革新的技術の開発では医療などの分野で幅広い協力が可能だろう。脱炭素化を目指す気候変動対策も連携できる。
かつての太い人脈は細り、冷静な対話もままならないのが日中関係の現状だ。同盟強化だけでは打開できない。米国頼みではない独自の対中戦略が求められる。