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梅津時比古・特別編集委員の「コンサート」にまつわるエッセー。

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シュッツ合唱団 日本初演の《受難》 断絶と、希求と=梅津時比古

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 「時は夜であった」

 時間が不意に止まることは知っている。科学的に計測される時間は均一に流れていても、生きるなかに組み込まれた時間は別に流れる。そこには濃い、薄いがある。

 人類の歴史の時間も、計測される時間とは大きく異なるに違いない。冒頭の一文は、オーストリアのハインリヒ・フォン・ヘルツォーゲンベルク(1843~1900年)作曲の《受難》の歌詞に見られる。その言葉が福音史家によって重く歌われたとき、それは特別な夜であった、という思いが色濃く押し寄せてきた。実証的な史実が指す夜とは無論、異なる時間だろう。

 ハインリヒ・シュッツ合唱団・東京とメンデルスゾーン・コーアの二つの合唱団によって日本初演された《受難》は、ヨハネ福音書に基づき第1部「聖木曜日」14曲、第2部「聖金曜日」20曲からなる教会オラトリオである(3月23日、東京・武蔵野市民文化会館)。合唱、叙唱、会衆と共に歌うコラール(今回はコロナ感染対策上、舞台上だけで歌われた)に分かれ、無伴奏の曲を除きムシカ・ポエティカ器楽アンサンブルとオルガン…

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