「日本の原風景」棚田の荒廃進む 「百選」でも雑木林に

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2009年に撮影された朝もやに輝く「国見の棚田」。今はここも……=栃木県那須烏山市提供
2009年に撮影された朝もやに輝く「国見の棚田」。今はここも……=栃木県那須烏山市提供

 景観の美しさから「日本の原風景」とも呼ばれる棚田。4月から5月にかけては、水が張られ、田植えも始まる見ごろだ。そんな棚田の荒廃が、各地で進んでいる。1999年に認定された「日本の棚田百選」(134カ所)がある全国107市町村に、毎日新聞がアンケートして現状を尋ねたところ、約4割の棚田で面積が減少したり、管理されなくなったりしていることが分かった。維持できない棚田がある一方で、地域を代表する観光地になった棚田もある。その分かれ目はどこにあるのか。各地の棚田を訪ね歩きながら考えた。

 棚田とは、山の斜面や谷間の傾斜地に階段状に作られた水田のことで、千枚田(せんまいだ)とも呼ばれる。棚田研究の第一人者で棚田学会顧問の中島峰広・早稲田大名誉教授(87)の推計によると、全国にある棚田の面積は計約15万ヘクタール(2019年)で、約239万ヘクタールある水田全体の6%に当たる。70年に始まった減反政策の影響で転作や放棄が目立ち始め、過疎・高齢化で拍車がかかった。中島さんは「農林水産省の資料から推計すると、棚田は88年の約22万ヘクタールから3割ほど減っている。70年当時と比べると半分ほどになっているのでは」と推測する。

 棚田は、平地に比べて維持・管理が大変な一方、昼夜の温度差が大きくて稲がゆっくり熟すことや、水源に近くて良い水で育つことなどから、上質米ができるとされる。また、山からの水を蓄えて洪水や土砂崩れを防ぐ役割も果たす。こうした多面的機能を持つ棚田を見直し、保全・整備を進めようと、農水省は棚田百選を認定した。岩手から鹿児島まで全国36府県から選ばれ、国指定の名勝・石川県輪島市白米(しろよね)地区や、月景色で知られる長野県千曲市の姨捨(おばすて)地区などが入った。

「減少」48カ所、「管理されていない」6カ所

 毎日新聞は2月、107市町村に百選の134カ所の現状を聞くアンケートを文書で送り、101市町村(127カ所分)から回答を得た。面積が百選認定当時と比べて「変わらずに維持されている」と回答したのは61カ所(48・0%)だった。1カ所(長崎市の大中尾地区)は増加したと回答した。

 一方、「減少した」との回答も48カ所(37・8%)あった。このうち、選定当時の面積の半分以下となっている棚田も13あった。愛知県設楽町の長江地区は90枚の水田が4枚に減った。長野市の「大西の棚田」も選定当時の40%ほどに減少したと回答した。

 6カ所(4・7%)は「管理されていない」、2カ所(1・6%)は「不明」だった。

 面積の増減とは別に、9棚田(7・1%)は「その他の変更がある」と答えた。「豪雨災害で景観が変わった」「数年以内に作付けをやめるとの情報がある」などの現状が寄せられた。

かつては映画撮影、今は看板も倒れ…

 「管理されていない」と回答があった棚田を3月に訪ねて回った。実際には、わずかな生産者が自家消費用の米を作り続けている場合もあり、栃木県那須烏山市の「国見…

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