非正規33年、日夜生徒と向き合い続けた そんな熱血教師を襲う不安

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「僕らの関わり方次第でほんまに子どもは変わるんです」。教員の魅力について身ぶり手ぶりを交えて語る非正規教員歴33年の男性=奈良県内で2021年2月27日午後4時39分、大久保昂撮影
「僕らの関わり方次第でほんまに子どもは変わるんです」。教員の魅力について身ぶり手ぶりを交えて語る非正規教員歴33年の男性=奈良県内で2021年2月27日午後4時39分、大久保昂撮影

 教壇に立って33年。昼も夜も休日も夢中で子どもと向き合ってきた。部活動の指導を終えた後、生徒の家を何軒も訪ね歩いて勉強を教えたこともある。しかし、立場はずっと不安定な「講師」のまま――。奈良県の中学校で教員をしている55歳の男性は、やりがいと楽しさで「このままでもいいかな」と思ったこともある。だが近年、漠然とした不安に襲われる。「熱血教師」の身に何が起きたのか。【大久保昂/東京社会部】

生徒と向き合い続け、試験おろそかに

 「今日も仕事あったんで、学校から来ましてん」

 まだ肌寒さの残る2月末の土曜日。約束の場所に現れた男性は「仕事服」のジャージー姿だった。サッカー部の副顧問をしているためか、日焼けした顔が引き締まって見える。ただ、短く刈り込んだ頭髪に目立つ白いものが、55歳という年齢を感じさせた。

 教員になったのは、日本がバブル景気に沸いていた1988年。専門学校で2年半ほど教えた時期を除き、教員生活の大半を奈良県の公立中学校で過ごしてきた。

 ただ、立場はずっと「臨時的任用教員」と呼ばれる非正規教員だ。年度ごとに契約を更新することになっているため、毎年教壇に立てる保証はどこにもない。

 もちろん、安定した立場の正規教員を目指していた。奈良県を中心に採用試験を受け続けたが、合格には届かなかった。奈良県では受験資格が「50歳以下」と定められているため、奈良県で正規教員になる道はすでに閉ざされている。

 「はっきり言って勉強不足。自分が悪いんですわ」

 男性は…

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