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接触アプリの失敗 無責任の連鎖にあきれる

 政府と企業の無責任な対応が、デジタル技術を活用した感染防止対策の失敗を招いた。

 新型コロナウイルス感染者と濃厚接触した可能性を知らせるアプリ「COCOA(ココア)」が4カ月以上機能していなかった問題の調査結果がまとまった。

 所管する厚生労働省に専門知識のある人材が少なかった上、開発に携わった事業者の役割が曖昧で、不具合が見落とされたという。あまりにもずさんな管理運営だ。

 不具合は昨年9月の更新作業時に生じ、その後の動作確認を怠ったために見逃した。技術者が意見交換するサイトで問題が指摘されたにもかかわらず、厚労省と事業者の情報共有が遅れた。

 担当者がITに疎く、動作確認の必要性や不具合の深刻さに気づかなかったと、厚労省は釈明する。

 とはいえ、政府にはITに精通した内閣情報通信政策監(CIO)ら専門家がいる。厚労省に常駐させて開発を支援することもできたのに、連携が不十分だった。

 安倍晋三前首相は、このアプリを感染対策の切り札と位置づけていた。必要な体制を整えなかった政治の責任は重い。

 民間委託のあり方にも問題があった。厚労省と契約した企業はアプリ開発の経験が少なく、実務を他社に再委託した。再々委託を含め、関わった企業は6社に及ぶ。

 各企業がどこまで開発に責任を負うかの役割分担が明確でなかったため、不具合に気づいた後も対応が後手に回った。

 アプリ開発は、使い勝手や不具合を確認し、改修するという作業の繰り返しだ。発注者と受注者の緊密な連携が欠かせず、事業者への丸投げは許されない。

 国民へのワクチン接種が進み、効果が出るまでには時間がかかる。アプリの利便性を向上させ、約2割にとどまる普及率を高めることが急務だ。

 デジタル化への対応力の強化は、各省庁に共通する課題だ。コロナ禍で打撃を受けた中小企業や個人に対する支援策が遅れた背景にも、IT基盤の弱さがあった。

 災害対策や社会保障など、行政サービスでITを活用する必要性は高まる一方だ。人材登用や民間委託のあり方を、前例にとらわれず見直さなければならない。

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