慰安婦訴訟 ソウル中央地裁、原告側に日本資産差し押さえの懸念指摘

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4月21日の2次訴訟判決を前に、慰安婦を象徴する少女像が建つソウルの日本大使館前で記者会見する支援団体の関係者=2021年4月12日、坂口裕彦撮影 拡大
4月21日の2次訴訟判決を前に、慰安婦を象徴する少女像が建つソウルの日本大使館前で記者会見する支援団体の関係者=2021年4月12日、坂口裕彦撮影

 韓国のソウル中央地裁が日本政府に対し元慰安婦の女性への賠償を命じた第1次訴訟の確定判決と関連し、同地裁が訴訟費用確保のために韓国内の日本政府資産を差し押さえるのは「国際法に違反する恐れがある」と指摘し、執行されれば「憲法における国家安保、秩序の維持や公共の福祉と相反する」と懸念を示した。同地裁が原告側に通知した「決定文」を毎日新聞が入手した。

 決定文は、賠償に応じない日本政府への強制執行に韓国司法が慎重な見解を示し、事実上のブレーキをかけたと言える。

 1月の第1次訴訟判決は、元慰安婦の女性ら12人に対し、1人あたり1億ウォン(約970万円)の賠償を命じた。日本政府は「主権国家は、他国の裁判所に裁かれない」という国際法上の「主権免除」の原則に反するとの立場から訴訟に関与せず、控訴しないまま判決は確定した。

 決定文は3月29日付で、判決を下した地裁判事とは別の判事が職権で出した。決定文は、賠償に充てるための日本政府資産の差し押さえについては言及していないが、強制執行手続きを進めることに対し国際法上の懸念を明確にしたことで、賠償手続きでも強制執行は難しい見通しとなった。

 決定文は、強制執行の手続きに関する主権免除について判断した。条約法に関するウィーン条約には「(国家間で交わした)条約の不履行を正当化する根拠として自国の国内法を用いてはならない」とあり、この国内法には判決も含まれると指摘。「条約が国内的に違憲であろうと」順守する義務があるとの見解を示した。

 日韓間の守るべき条約として、1965年の日韓請求権協定や、2015年の日韓合意を例示し、日本が10億円を拠出した「和解・癒やし財団」から元慰安婦らが現金を受け取った経緯から「今回の訴訟に関して差し押さえなどの強制執行を行うことは、(原告の)権利乱用にあたる」とした。

 そのうえで実際に差し押さえなどが行われた場合、「我が国の司法の信頼を阻害するなどの重大な結果をもたらす」と懸念を示した。

 原告側は判決後に差し押さえられる財産を探したが見つからなかったとして、今月13日に裁判所を通じて財産を探す手続きに踏み切った。

 21日には、別の慰安婦らが日本政府に賠償を求めた2次訴訟の判決も予定されている。【ソウル渋江千春】

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