福岡のロシア料理店「ツンドラ」閉店へ コロナで社長「限界」

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閉店を決断し、「お客さんには感謝でいっぱいだ」と話すロシア料理のレストラン「ツンドラ」社長の徳永哲宥さん=福岡市中央区で2021年4月19日、比嘉洋撮影 拡大
閉店を決断し、「お客さんには感謝でいっぱいだ」と話すロシア料理のレストラン「ツンドラ」社長の徳永哲宥さん=福岡市中央区で2021年4月19日、比嘉洋撮影

 福岡市の中心街で1960年の創業以来、家庭的な雰囲気で親しまれたロシア料理の老舗レストラン「ツンドラ」(中央区大名2)が5月7日に閉店する。後継者の不在で経営の先行きが見通せなくなったところに、新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちをかけた。社長の徳永哲宥(てつひろ)さん(77)は「断腸の思いだが限界だった」と語った。

 料理好きだった母の初美さん(2019年死去)が東京のロシア料理店で修業を積み、初代の店は繁華街・天神のビルの地下でオープンした。当時、高校生だった徳永さんが開いた地理の教科書の「ツンドラ」の文字が母子の目に留まり、そのまま店の名前に。創業時の味は73年に今の場所に移転した後も守り続けた。

温かいボルシチ(手前)やキノコのつぼ焼き(右奥)、ピロシキ(左奥)などが並ぶ人気メニューの「つぼ焼きランチ」(1617円)=福岡市中央区で2021年4月19日、比嘉洋撮影 拡大
温かいボルシチ(手前)やキノコのつぼ焼き(右奥)、ピロシキ(左奥)などが並ぶ人気メニューの「つぼ焼きランチ」(1617円)=福岡市中央区で2021年4月19日、比嘉洋撮影

 看板メニューのボルシチはトマトと赤い根菜のビーツ(ビート)をベースにジャガイモやニンジン、豚肉を優しく煮込んでいる。創業時はビーツの入手が難しかったため、トマトを多めに使ったレシピが長く愛された。

 家族連れでもくつろげる雰囲気は幅広い世代から人気を集め、俳優の菅原文太さんや元横綱・栃錦も生前に通ったという。店を継いだ徳永さんは「若者に受けようとか、気取った店にしようとか、何も考えずに自然体だったから続けられた」と振り返る。

持ち帰り品として親しまれるボルシチの缶詰は閉店後も販売を続ける方向で検討している=福岡市中央区で2021年4月19日、比嘉洋撮影 拡大
持ち帰り品として親しまれるボルシチの缶詰は閉店後も販売を続ける方向で検討している=福岡市中央区で2021年4月19日、比嘉洋撮影

 ただ、時代の波にはあらがえなかった。店の向かいでは容積率緩和で再開発を促す市の「天神ビッグバン」事業で外資系高級ホテルを核とする25階建てビルの建設が進む。周囲の地価上昇に伴い、賃料の値上げも予想され、払い続ける経営体力はないと判断した。「福岡の変化についていけなくなった」

 お土産として人気のボルシチの缶詰(2人前)は閉店後も販売を続けようと考えている。徳永さんは「思い出を共有してくれたお客さんたちには感謝でいっぱいだ。いつもと変わらない雰囲気で閉店を迎えたい」と話す。ツンドラは火曜定休。5月4日は営業する。【比嘉洋】

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