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医師不在の琵琶湖・沖島 24日から島民の96%にワクチン接種

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琵琶湖の沖島。淡水湖に浮かぶ島で人が暮らすのはここだけだ=滋賀県近江八幡市で2018年11月28日、本社ヘリから猪飼健史撮影 拡大
琵琶湖の沖島。淡水湖に浮かぶ島で人が暮らすのはここだけだ=滋賀県近江八幡市で2018年11月28日、本社ヘリから猪飼健史撮影

 琵琶湖に浮かぶ沖島(滋賀県近江八幡市沖島町)で24日、高齢者と合わせて一般の島民に対する新型コロナウイルスワクチンの接種が始まる。全国的には高齢者への優先接種が始まったばかりだが、人口の少ない離島では医療体制や効率性を考慮して高齢者以外への同時接種が認められるからだ。「島は一つの家のようなもの。感染者が出たら全体にうつる恐れがある」。島民たちはワクチン接種に期待を寄せている。

人口258人、高齢化率64%

琵琶湖に浮かぶ沖島 拡大
琵琶湖に浮かぶ沖島

 「今は丸腰の状態。希望はワクチンだけです」。沖島町自治会が運営し、対岸と島を結ぶ定期船「通船」の船長、冨田甚一さん(63)は喜ぶ。

 沖島(1・5平方キロ)は琵琶湖で最も大きい島だ。人口は258人(3月現在)で、淡水湖にある日本唯一の有人島としても知られる。対岸とは約1・5キロ離れ、船で10分ほど。コロナ禍の前は年間約2万5000人が観光や釣りで島を訪れていた。最初の緊急事態宣言が出された1年前、自治会は観光客らに来島自粛を呼び掛ける看板を掲げるなど「水際対策」に努めてきた。現在は自粛を求めていないものの、「第4波」の状況次第では同様の対応を取る可能性もあるという。今のところ、島内での感染確認例はない。

 ワクチンは24、25日に1回目の接種がある。使用が許可されていない16歳未満を除き、全島民の96%に当たる248人が対象だ。近江八幡市は今回、県から配分された最初のワクチンの一部を優先的に沖島へ回した。その理由の一つが、65歳以上の割合を示す高齢化率が64%と極めて高いことだ。当然、感染した際の重症化リスクも高まる。しかし、島に医療機関はなく、週1回の訪問診療しかない。患者の搬送は対岸の近江八幡消防署が備える救急艇のほか、島の消防団の消防艇を使用することもあるが、琵琶湖の波が高いと出動できないこともある。

新型コロナウイルスの感染が全国的に拡大した2020年4月、沖島の対岸の港では観光客らに来島自粛が呼び掛けられた=滋賀県近江八幡市の堀切新港で2020年4月10日、村瀬優子撮影 拡大
新型コロナウイルスの感染が全国的に拡大した2020年4月、沖島の対岸の港では観光客らに来島自粛が呼び掛けられた=滋賀県近江八幡市の堀切新港で2020年4月10日、村瀬優子撮影

 近江八幡市のワクチン接種担当者は「沖島で接種をするのは、交通の便が悪い離島で高齢化が進んでいることが大きい。クラスター(感染者集団)発生時の対応も困難」と話す。沖島町自治会長の森田正行さん(70)は「島民が感染したら大変なことになる。ワクチンを受けたら安心できる」とし、市が島民への接種を優先したことに感謝する。

 沖島に人が住み始めたのは12世紀の平安時代末期。源氏の落ち武者7人が漂着してからだと伝えられている。島民の多くは漁業で生計を立てており、島にある「沖島漁業協同組合」の組合員は74人。新型コロナ感染拡大の影響で琵琶湖の幸を提供する飲食店の客が激減して出荷も減り、経済的に大きな打撃を受けた。漁協組合長の奥村繁さん(73)は「モロコ、ビワマス、アユの単価も下がり、収入は激減した。船の燃料代にもならん。遠くに漁へ出るほど赤字になる」と嘆く。漁協婦人部で琵琶湖の魚料理を販売する「湖島婦貴(ことぶき)の会」は2020年4~6月に店を閉め、通信販売に力を入れた。メンバーの一人は「ワクチン接種はありがたい。でも沖島の住民だけに打ったところで、全国的にコロナが収まらないと……」と話す。

 ワクチン接種について、沖島学区まちづくり協議会の会長、小川ゆかりさん(55)は「島民のリスクが100%回避されるわけではない。感染予防は続けなければならない」と気を引き締める。2回目のワクチン接種は5月15、16日の予定だ。

 離島でのワクチン接種は、沖縄県でも始まっており、65歳未満の島民も受けている。政府は、ワクチンの供給量が接種を希望する高齢者の数を上回るような人口がおおむね1000人未満の離島や自治体では、高齢者以外の接種も認めている。【庭田学】

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