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「アポなし」でOK? 3月渡米の記者はワクチンを接種できるのか

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アウトレットモールに設置された新型コロナウイルスワクチンの接種会場=米東部メリーランド州ヘイガーズタウンで2021年4月20日午後0時24分、秋山信一撮影 拡大
アウトレットモールに設置された新型コロナウイルスワクチンの接種会場=米東部メリーランド州ヘイガーズタウンで2021年4月20日午後0時24分、秋山信一撮影

 新型コロナウイルスの感染者や死者が世界で最多の米国では、ワクチンの接種が急ピッチで進められている。3月末に渡米した記者は早めに接種を受けたいと思い、4月20日に東部メリーランド州に設けられた「大規模接種会場」へ向かった。「アポなし」(予約なし)で果たして接種を受けられるのか。

 首都ワシントン郊外から高速道路を車で走り、約1時間。メリーランド州ヘイガーズタウンに入ると、路肩に矢印がついた「ワクチンセンター」との看板が現れた。一般道路に出ると、すぐに会場のアウトレットモールに到着した。

 新型コロナの影響で営業中の店舗は半数程度しかなく、駐車場も空きスペースが多かった。だが「MASS VAX(大規模接種会場)」の表示が張られた建物に近づくにつれ、車や人の姿が増えた。

 実は会場に来てもなお、実際に接種を受けられるかどうか確信はなかった。メリーランド州で接種を受けるためには、州のウェブサイトから接種に向けた予備登録をした上で、当局からの連絡を受けて予約を確定させる必要がある。

アウトレットモールに設けられた新型コロナウイルスワクチンの接種会場に向かう接種希望者ら。左側の看板「WALK-INs」は、「アポなし」(予約なし)で訪れた人用のゲート=米東部メリーランド州ヘイガーズタウンで2021年4月20日午後0時25分、秋山信一撮影 拡大
アウトレットモールに設けられた新型コロナウイルスワクチンの接種会場に向かう接種希望者ら。左側の看板「WALK-INs」は、「アポなし」(予約なし)で訪れた人用のゲート=米東部メリーランド州ヘイガーズタウンで2021年4月20日午後0時25分、秋山信一撮影

 私は4月15日に予備登録をしたが、当局からの返信はなかなか届かなかった。「公式ルート」では、いつ順番が回ってくるか分からない。ただ、「飛び入り」で接種が受けられることもあると聞いていた。予備登録しかなく、しかも渡米から間がないため米当局が発行する身分証明書もなかった。少しでも早く接種を受けようと、拒否されることも覚悟して大規模会場に向かったのだった。

「アポなし」(予約なし)での接種を希望する市民向けのゲート。ワクチン接種会場の外に設けられていた=米東部メリーランド州ヘイガーズタウンで2021年4月20日午後0時28分、秋山信一撮影 拡大
「アポなし」(予約なし)での接種を希望する市民向けのゲート。ワクチン接種会場の外に設けられていた=米東部メリーランド州ヘイガーズタウンで2021年4月20日午後0時28分、秋山信一撮影

 会場外の出入り口では州兵が案内役を務めていた。予約の有無を尋ねられ、「予約はしていないです」と答えた。すると「では、そちらの黄色と黒のしま模様の矢印を進んでください」と「アポなし」用のゲートに案内された。ゲート脇の柱には「利用可能なワクチンがある場合だけ」と接種できる条件が記されていた。予約した人が来なかったり、ワクチンの準備に余裕があったりした場合には、飛び入りの人でも接種を受けられるという意味だ。

 行列はできておらず、接種への期待が高まる。順路に沿って建物の中に入り、身分確認のための窓口に着いた。

 接種会場は大型の家具店を改装しており、身分確認は生活用品売り場だった場所で行われていた。パスポートの提示と、氏名、電話番号、住所の登録だけで終わり、不安だった身分証明書の提示は不要だった。居住証明のために住宅の賃貸契約書や公共料金の請求書も準備していたが、使う場面はなかった。

 登録が済むと、接種のコーナーに向かった。「英語は大丈夫ですか」と聞かれ、医療用語の理解に不安があるため「大丈夫ではない」と答えた。すると、多言語対応のスペースに案内された。日本語での対応はなかったが、スタッフが分かりやすい英語で対応してくれた。

 改めて本人確認をされた後、名刺の2倍ほどの大きさの「新型コロナワクチン記録カード」を受け取った。3分ほど待つと、ワクチンが運ばれてきた。上腕に長さ数センチの細い注射針を刺され、あっという間に接種は終わった。スタッフは「泣いたらだめだよ」と冗談を飛ばした。接種を受けたのは米製薬大手ファイザー社製。2回の接種を受ける必要があるため、約3週間後の予約を入れた。

 接種後の15分間の待機を含めて、会場に入ってから接種まで30分もかからなかった。同じ時間帯に100人ほどが接種を受けていたが、行列はできていなかった。スタッフは「ここは誰でも受け入れているから、メリーランド以外の州からも接種を受けに来る人がいる。でも会場が広く、接種はスムーズに進んでいる」と話していた。

 接種後は上腕にじんわりと痛みがあったが、30分ほどで収まった。頭は普段よりは鈍重な感覚があるが、帰宅時の運転には問題がなかった。あまりにもすんなりと接種を受けられたため、拍子抜けしてしまった。

 一方で、副反応に関する説明が十分だったとは言い難い。メリーランド州では、ファイザー、モデルナ、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の3社のワクチンを使用してきた。予備登録をするオンラインのページで、それぞれのワクチンの副作用や主な副反応の症状などを説明した文書を読むためのリンクが付けられている。「関連する文書を読んだ」という項目にチェックを入れないと手続きを進められない。ただ、実際には文書を読まずにチェックを入れることも可能だった。会場でも、接種の直前に発熱やアレルギーの有無などは尋ねられたが、副反応に関する説明はなかった。

 米国では既に計2億回以上の接種が行われている。接種が1回で済むJ&Jのワクチンで異常な血栓が生じる例があったため、4月中旬に使用を停止したが、他の2種のワクチン接種は進んでいる。人口約600万人のメリーランド州だけでも接種会場は大小合わせて550カ所以上あり、医師、看護師、一部の薬剤師らが接種にあたっている。医療機関だけでなく、近所のスーパーに併設された薬局やドラッグストアでも接種が行われており、市民の間には「夏までには生活が正常に近づくのではないか」との期待感が広がっている。【ワシントン秋山信一】

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