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日本文化をハザマで考える

日本文学研究家のダミアン・フラナガンさんが、日英の「ハザマ」で日本文化について考えます。

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第36回 熊本 果たして天国か地獄か

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外装の修復がほぼ終わった熊本城の天守閣=熊本市中央区で2021年2月、矢頭智剛撮影
外装の修復がほぼ終わった熊本城の天守閣=熊本市中央区で2021年2月、矢頭智剛撮影

 熊本は文学の歴史に富んだ町であるが、そこに住んだ知識階級に必ずしも愛されていたわけではなかった。

 作家の小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)と夏目漱石は1890年代に、ともに旧制第五高等学校(現在の熊本大学)で英文学を教えた。漱石はハーンの後任だった。ハーンは日本での最初の1年を過ごした松江には、深い愛着を感じていた。妻となるセツに出会った街である。これとは反対に、熊本のことは、「地獄の底の監獄だ」と表現した(このことは、なぜか観光案内には出ていない)。

 ハーンは松江を含む島根県全土を、現代社会の影響をほとんど受けていない、昔からの伝統が息づく日本の「神々の土地」として楽しんだ。彼は島根の海岸に沿って船でしか行けない、岩の多い人里離れた土地に足を踏み入れ、自分がその土地を訪れた最初の西洋人であることに興奮した。

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