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郵政の巨額買収失敗 無責任体質の検証が必要

 日本郵政が、傘下の豪州物流会社トール・ホールディングスの主力事業を売却する。

 海外進出の足がかりとして2015年に6200億円で買収したものの、収益が悪化して2年後には4000億円もの損失を出していた。今回は豪州国内の物流事業を処分し、さらに674億円の損失を計上するという。

 日本郵政は、豪州経済の低迷やコロナ禍を理由に挙げる。しかし、豪州の国内事業を保有する意味は乏しかった。事業内容を十分に吟味しないまま買収に踏み切ったのは、ずさんというほかない。

 当時の西室泰三社長ら一部の幹部が主導し、取締役会でほとんど議論しないまま買収を決めた経緯がある。

 郵政民営化の節目である株式上場を控え、海外展開という成長シナリオを示して株価を上げようとする功名心やあせりが、判断を誤らせたのではないか。

 当初はトールに十分な人材を送らず、現地に経営を丸投げする状態だった。トール自体が合併を繰り返した寄り合い所帯で、業務の重複が多い。効率化を進められなかった歴代経営陣の責任は重い。

 にもかかわらず、買収が失敗に終わった理由と責任の所在を明確にしようとする姿勢が見えない。

 財務基盤が弱まれば、公共性の高い郵便事業にしわ寄せが生じかねない。筆頭株主の政府は保有株を売却して東日本大震災の復興財源に充てる方針だ。企業価値が下がれば、国民に影響が及ぶ。

 国際物流を収益の柱に育てる戦略は維持するという。郵便の国内需要が縮小する中、海外に活路を求めるのは一つの選択だろう。

 ただし、具体的な戦略を詰めるのはこれからだ。既に買収から6年が経過している。スピード感を欠いた経営で、欧米の巨大物流企業と渡り合えるのだろうか。

 郵政グループは、日本通運の宅配事業を吸収した10年にも大量の配達遅れを起こし、巨額の赤字を出した。

 事前の想定が甘く、事業を管理しきれなかった点は、トールの問題と共通している。

 これ以上、失敗を繰り返すことは許されない。巨額の投資を無駄にした教訓を生かし、体質を改めなければならない。

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