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多様性時代の「選択的夫婦別姓」とは 体験や境遇語り合う 香川

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グループディスカッションで意見を出し合う参加者=香川県高松市鍛冶屋町で2021年4月17日午後3時50分、西本紗保美撮影 拡大
グループディスカッションで意見を出し合う参加者=香川県高松市鍛冶屋町で2021年4月17日午後3時50分、西本紗保美撮影

 夫婦が結婚前の姓を名乗ることを認める「選択的夫婦別姓」について話し合う「選べる社会?選べない社会? 選択的夫婦別姓を考えるワークショップ」(毎日新聞高松支局、コーバタカマツなど後援)が、高松市内であった。参加者は夫婦の姓のあり方について率直に語り合った。【西本紗保美】

 イベントは、毎日新聞香川県版で3月6~8日に掲載された連載企画「私の生き方 選択的夫婦別姓へ」がきっかけとなり、市民有志が実行委員会を組織し4月17日に開催した。検温やマスクの着用など新型コロナウイルスの感染予防対策を行い、この問題に高い関心を持つ女性3人が自身の体験や境遇を基に考えを述べた。

 高松市議会に対し、選択的夫婦別姓の導入を求める意見書採択を働きかける「選択的夫婦別姓制度をねがう高松市民の会」代表の山下紀子さん(48)は、過去に事実婚をして夫婦別姓を認める民法改正の実現を待ち続けたが議論が進まないため、昨年に市民の会を設立した経緯を語った。「家族の絆が壊れる」との理由で夫婦別姓への反対意見があることに対し、「子どもたちは両親の姓が違うことは当たり前だと思っている。夫の両親にも事実婚の選択を尊重してもらえて感謝している。望まない改姓をしなかったことで家族の絆は深まった」と話した。

ワークショップで選択的夫婦別姓について語る高善寺住職の鎌田拓子さん=香川県高松市鍛冶屋町で2021年4月17日午後2時38分、西本紗保美撮影 拡大
ワークショップで選択的夫婦別姓について語る高善寺住職の鎌田拓子さん=香川県高松市鍛冶屋町で2021年4月17日午後2時38分、西本紗保美撮影

 同市瓦町の高善寺住職の鎌田拓子(ひろこ)さん(47)は、寺院の規則で女性住職が改姓できないケースが多いことを指摘。そのため、やむなく事実婚をして夫婦の財産相続ができなくなってしまったり配偶者控除を受けられなかったりするデメリットがあるという。また、子どもが女性しかいない家の姓が改姓で途絶えると、墓などを引き継げなくなる問題もある。鎌田さんは「夫の名字だけを大事にして、妻は自分の名字を大事に思う選択ができなくていいのか。家を守るために夫婦別姓を望む人がいることも知ってほしい」と訴えた。

 一方、子育て支援団体「ぬくぬくママSUN’S」代表理事の中村香菜子さん(39)は、「同姓にしたい人も別姓を望む人もいる。多様性の時代は、一歩間違えば家族が分断されてしまう。否定しあうのではなく、みんなが納得できる答えを対話によって見つけることが大事」と話した。

市民の声、可視化を

 なぜ多様性が重視される世の中で、夫婦が同姓や別姓を自由に選べる制度が実現しないのか――。強い疑問を感じていた記者(28)も今回のイベント運営に参加し、市民の声に耳を澄ますことの大切さを感じた。

 現状の問題点は大きく三つあると思う。第1に、専門家の調査などによると国民の多くは選択的夫婦別姓に賛成なのに、一部保守系議員の反対で制度の導入を何度も棚上げしてきた政治の責任がある。2番目は、望まない改姓でアイデンティティーの喪失や精神的苦痛を感じる人が存在するという人権の問題だ。最後に、改姓の96%は妻側が行っており、社会の「暗黙のルール」の下、女性が不便さや不平等を強いられるというジェンダー問題がある。イベント冒頭、スライドを使ってこの3点を説明した。

 グループディスカッションでは「姓を選べる自由」を望む意見が多く聞かれた一方、「制度が導入されて逆に困る人はいないか知りたい」という声も上がった。国会やインターネット上では、夫婦別姓は「子どもがかわいそう」「家族の絆が弱まる」といった感情論が目立つが、合理的な反対理由があればぜひ聞いてみたい。

 この問題に限らず、市議会で大きな社会問題を議論しようとすると「国会でやる話だろ」などと建設的な議論を拒むヤジが入ることが多々ある。こうした場面に出くわすたび、地方の政治は機能しているのかと疑問に感じる。社会の「当たり前」に不利益を受けている人がいないかどうか、地域の輪の中で市民の声を可視化していくことが大事だと改めて思った。

「二つの姓に違和感」「改姓にうれしさ」

 今回のイベントでは、県内に住むさまざまな年代の男女約20人が3グループに分かれ、夫婦同姓が民法で定められた現行制度のあり方などについてディスカッションした。進行役は、改姓に伴う苦労を体験するために妻の姓を選んだ村山淳さん(32)=町おこし団体「トピカ」代表理事=が務めた。意見の一部を紹介する。

 ▽40代女性 自己紹介ではいつも二つの名前を名乗っている。旧姓で活動してきたキャリアと、改姓した名前が紐付かないことに違和感があり、なぜ今の制度が続いているのか知りたい。

 ▽20代男性 自分が結婚で改姓したらどう思うか父親に聞くと「あり得ない」と言われた。女性差別にもつながるし、姓を選択できないのはいかがなものかと思う。

 ▽50代男性 会社の屋号を継ぐため、自分が婿養子となって改姓した経験がある。資格などの手続きでいちいち戸籍謄本を取るのは不便で、世の中の大多数の女性は苦労しているのだなと実感した。

 ▽30代女性 結婚はまだ先なので正直、自分事ではなかったが、もし自分の姓が変わったらどう感じるかを考えてみようと思った。

 ▽10代男性 外国では別姓も選べるのに、日本では選べないのは疑問だ。「選択的」な制度なので、同姓を望む人はこれまで通り同姓を選べばよい。

 ▽40代女性 私は夫の姓に改姓し、「家族になれたんだ」と思えてうれしかった。自分とは別の選択を否定することにつながらない制度になってほしい。

 ▽30代男性 選択的夫婦別姓が制度化されれば、夫婦どちらかの姓に改姓するか、結婚前の姓を続けるかの選択を必ず迫られるので戸惑う人が多いかもしれない。明治以降、先祖が受け継いできた名字を簡単に変えていいのだろうか。

選択的夫婦別姓

 民法750条は「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫または妻の氏を称する」と夫婦同姓を定めている。国の法制審議会は1996年、民法改正案要綱で結婚前の姓も選択できる制度の導入を答申したが、実現していない。政府が2020年末に閣議決定した「第5次男女共同参画基本計画」では、自民党内の反発を受けて「選択的夫婦別氏制度」の文言が削除された。

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