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新たな「ポーの一族」今後の展開は?萩尾望都さんに聞く

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福岡県大牟田市の漫画コレクター・原田誠一さんから借り受けた掲載当時の雑誌も並ぶ久留米会場=久留米市美術館で2021年4月16日午後11時47分、上村里花撮影
福岡県大牟田市の漫画コレクター・原田誠一さんから借り受けた掲載当時の雑誌も並ぶ久留米会場=久留米市美術館で2021年4月16日午後11時47分、上村里花撮影

 「ポーの一族」や「トーマの心臓」など人間の内面に迫る深い心理描写やスケールの大きな物語で独自の世界を描き続けている漫画家の萩尾望都(はぎおもと)さん。1969年のデビューから50年を記念した展覧会「萩尾望都 ポーの一族展」が全国巡回中で、4月には故郷・福岡県での展示が始まった。「登場人物たちが私に話しかけてきた」。2016年に40年ぶりに再開した代表作「ポーの一族」の今後の展開などを聞いた。【聞き手・上村里花/西部学芸グループ】

 <「ポーの一族」は、72~76年に描かれた少年エドガーを主人公としたバンパネラ(吸血鬼)一族の物語。長編3編と複数の短編で構成される。14歳で吸血鬼の一族に加えられたエドガーは、少年のまま永遠に年を取らない。人間だった頃の記憶にさいなまれ、時間が自分の傍らを通り過ぎていく孤独の中で生き、何も生み出さない者として存在する苦悩が描かれる。最愛の妹メリーベルを亡くしたエドガーは、少年アランを仲間に加え、時間をも超えた、あてどのない旅を続ける――。主人公らの名前は作家、エドガー・アラン・ポーから取られた>

 ――16年に40年ぶりに「ポーの一族」を再開されました。心境の変化はどういうものだったのでしょうか。

 萩尾望都 作家の夢枕獏さんから会うたびに「ポーの続きは描かないの? 僕、続きを読みたいなー」とかわいく懇願され、思考を巡らせているうちにエドガーたちが私に話しかけてきたのが始まりです。(40年ぶりに)突如、おしゃべりを始めた彼らに耳を傾けているうちにストーリーが発展していきました。

 <17年に「ポーの一族」新シリーズとして「春の夢」、19年に「ユニコーン」、20年に「秘密の花園」が相次いで刊行された。第二次世界大戦下の欧州から、2016年のドイツ、そして、1888年のイギリスへ。一族の秘密や旧作につながる物語が展開する>

 ――新春のNHKのインタビューでは「エドガーは異端であり、社会から否定される立場の人として描いた」と話されていました。自身を異端だと感じていた萩尾さんの子供時代の経験や思いが色濃く反映され、エドガーは萩尾さんの一種の分身とも言えるかと感じたのですが、70年代の執筆当時は「ポーの一族」はどのような存在だったのでしょうか。

 萩尾 (エドガーを)分身とは考えていませんでした。初め…

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