ローカル線のLRT化を 「二匹目のドジョウ」狙う富山のJR再編議論

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山あいのJR城端駅に停車する城端線の列車。昔ながらの気動車は鉄道ファンに人気だ=富山県南砺市の城端駅で2019年11月30日午後2時42分、高良駿輔撮影 拡大
山あいのJR城端駅に停車する城端線の列車。昔ながらの気動車は鉄道ファンに人気だ=富山県南砺市の城端駅で2019年11月30日午後2時42分、高良駿輔撮影

 富山県西部でJR西日本が運行するローカル線、氷見線(16・5キロ)と城端(じょうはな)線(29・9キロ)について、県や高岡市など沿線自治体は次世代型路面電車(LRT)移行や直通化を視野に再編議論を始めた。利用客が減り続ける中、地元は利便性を高めれば需要が増えると期待する。富山市では老朽化したJRの路線をLRT化で再生した先例もあり、「二匹目のドジョウ」を狙うことはできるのか。

 氷見線・城端線は高岡駅(高岡市)を起点に氷見駅(氷見市)、城端駅(南砺市)をそれぞれ結ぶ。城端線の新高岡駅は北陸新幹線から乗り換えができ、氷見線との直通運行によって「氷見寒ぶり」など海の幸で知られる氷見まで直接アクセスできる。

JR城端駅に停車する城端線の列車。旧国鉄時代から引き継がれた列車はローカル線の風情を感じさせる=富山県南砺市のJR城端駅で2019年11月30日午後2時48分、高良駿輔撮影 拡大
JR城端駅に停車する城端線の列車。旧国鉄時代から引き継がれた列車はローカル線の風情を感じさせる=富山県南砺市のJR城端駅で2019年11月30日午後2時48分、高良駿輔撮影

 現状でも直通運行は可能だが、実際には週末などの観光列車に限られる。高岡駅の氷見線・城端線のホームは第三セクター、あいの風とやま鉄道(旧・JR北陸線)の線路を挟んで数十メートル離れ、複雑なスイッチバックが必要なためだ。

観光客誘致、利便性向上に期待

 議論の端緒は利用客の減少に悩むJR西の提案だ。県と、砺波市を含む沿線4市に2020年、LRTやバス高速輸送システム(BRT)など新しい交通体系の検討を促した。

氷見線と城端線 拡大
氷見線と城端線

 提案理由は赤字対策とみられるが、背景には富山市内でかつてJRが運行した富山港線を市が公設民営方式で06年にLRT化し、利用客の増加につなげた「成功体験」もある。観光客誘致に加え、通勤通学利用の促進にもつながるかもしれない。地元関係者は、そんな期待を寄せる。

 しかし県庁所在地で人口も横ばい状態の富山市に比べ、沿線4市の人口減は顕著だ。JR西、県と4市による「城端線・氷見線LRT化検討会」は現状のままだと利用客は40年に19年比で29%減ると予測する。また県庁や繁華街へと直通する富山港線に対し、沿岸部や中山間地を運行し、沿線人口が分散傾向にある違いもある。

 それでも検討会はLRT・直通化への「布石」を打った。3月には沿線住民約4600世帯が回答したアンケート結果を公表。現状の交通手段は約80%が自動車で、氷見線・城端線は3%。一方でLRT化した場合には35%が「利用したい」と回答した。これを根拠に「需要拡大が見込まれる」と結論付けた。

課題多く、現状は「机上の空論」

 ただ課題は多い。そもそも富山港線の需要拡大には、運行本数を1時間当たり最大4本に増便した影響が大きかったとされる。氷見線・城端線ともに現在の運行本数は同1本ほど。検討会もLRT・直通化だけでは利用客減を食い止められないことを認めている。

 またスイッチバックせずに直通運行するためには、あいの風とやま鉄道との立体交差化も避けられない。事業費や自治体の費用負担などの試算は示されず、今は「机上の空論」のままだ。検討会は今後、富山港線の実績を踏まえながら試算を進めるという。

 実現に向け、交通政策の専門家は自治体の財政負担に加え、沿線住民の積極的な関与が必要と口をそろえる。

 名古屋大大学院の加藤博和教授は「地域に恩恵ある公共交通には『自治体の補助があって当然』という考えが海外では基本。地域が良くなるなら税金投入は問題ないが、必要以上の費用をかけるのは良くない。まずは運行本数など利用者にとってどういうサービスが必要か検討しなくてはならない」と述べる。

 また関西大の安部誠治教授も「住民も『マイレール』の意識を持って積極的に利活用しないと成功しないだろう」と説く。【高良駿輔】

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