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3回目の緊急事態宣言 国民の命を守る正念場だ

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 新型コロナウイルスの感染急拡大を受け、政府は東京都と大阪府など4都府県に3回目の緊急事態宣言を発令することを決めた。あすから5月11日までの17日間だ。

 東京などで前回の宣言が解除されてからわずか1カ月余りだ。菅義偉首相は当時、「再び宣言を出すことがないように対策をやるのが責務だ」と述べていた。失政に国民の不信が高まっている。

 感染力が強い変異株が広がり、高齢者だけでなく40~50代の重症者も増えている。大阪府では病床が逼迫(ひっぱく)し、医療崩壊が始まっていると指摘される。

 国民の命を守る正念場だ。政府の覚悟が問われている。

変異株を甘くみた首相

 前回は、1日当たりの新規感染者数を十分に減らせないまま宣言の解除に至った。特に関西圏は、期限を1週間前倒しして解除を決めた。

 関西圏で感染者数が再び増加し始めると、政府は地域を限定した「まん延防止等重点措置」で抑え込みを図った。だが、変異株の広がりが明らかになって専門家が対策の強化を求めても、迅速に対応しなかった。

 感染の第4波が明らかになった後も、菅首相は「全国的な大きなうねりとまではなっていない」と認めなかった。知事からの要請を受けて、宣言の発令に追い込まれた形だ。

 経済への打撃を軽減することにこだわり過ぎたのではないか。政府はこの間の対応について検証を急ぐべきだ。さもなければ、同じ失敗を繰り返すことになる。

 今回の宣言では、人出を極力抑えるため、酒類を出す飲食店のほか百貨店など集客施設への休業要請が出される。命令に応じない事業者は、過料の対象となり得る。

 休業要請をめぐっては、地下街なども対象に含めるよう求める大阪府に対し、政府側が「経済的な影響が大きい」と慎重姿勢を示すなど足並みが乱れた。

 事業者への支援や雇用を守る手立てが欠かせない。コロナ対策の予備費5兆円をためらわず活用すべきだ。需要喚起策「GoToキャンペーン」の予算を利用することも一案だろう。

 埼玉など首都圏の3県は宣言の対象から外れ、前回のような東京都と一体の対応は見送られた。

 3県はまん延防止措置を講じている。だが、より制限が厳しい東京から人が流入することが懸念されている。そのような事態を回避するための対策を徹底しなければならない。

 宣言は最低でも3週間必要だとの指摘が専門家から出ていた。政府はゴールデンウイークの集中的な対策だというが、17日間に限ったことは疑問だ。新規感染者数や重症者数の抑制効果を見極めるには時間がかかる。

 医療現場は疲弊しきっている。宣言を解除する場合は、感染者数や重症者数が十分に減ってからにすべきだとの声が強い。

 来月中旬には、東京オリンピックの開催準備のため、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が来日を予定している。五輪日程への配慮から、解除を急ぐようなことがあってはならない。

協力得る丁寧な説明を

 外出を自粛する「ステイホーム」も改めて呼び掛けられる。自宅にこもることでストレスが高まり、家庭内のトラブルが増えることも懸念されている。関係機関は相談体制を整え、目配りを欠かさないでほしい。

 昨春の宣言から生活の制約が続き、国民の間には自粛疲れが目立っている。特に、東京では大阪より新規感染者が少ない。コロナ慣れから危機感が薄くなることが心配だ。

 感染対策に国民の協力を得るためには、対策の強化に至った経緯や必要性を政府が分かりやすく伝えなければならない。感染リスクが高い場面や控えるべき行動について、粘り強く理解を求めることも重要だ。

 政府が感染対策の切り札と位置付けるワクチンの確保や、自治体による接種体制の整備は遅れている。重症化リスクが高い高齢者への接種でさえ、夏ごろまでかかると見込まれる。

 国民にワクチンが行き渡るまでは、感染対策の徹底と医療体制の拡充で乗り切らなければならない。政府は厳しい現実を直視し、実効性のある戦略を立てることに力を注ぐべきだ。

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