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「はよ蹴ろや」五郎丸歩「ルーティン」へのヤジ、英国で流した涙

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ラグビー・トップリーグの試合でペナルティーキック前にポーズを決めるヤマハ発動機の五郎丸歩選手=パロマ瑞穂ラグビー場で2015年11月14日、木葉健二撮影
ラグビー・トップリーグの試合でペナルティーキック前にポーズを決めるヤマハ発動機の五郎丸歩選手=パロマ瑞穂ラグビー場で2015年11月14日、木葉健二撮影

 今季限りで現役引退したラグビー元日本代表の五郎丸歩選手(35)が泣いた時を忘れられない。2015年ワールドカップ(W杯)イングランド大会。正確無比のキックと「五郎丸ポーズ」で人気者になったが、英国の地で2度涙した。そこにはラグビーへの熱い思いがあった。【吉見裕都】

ブライトンの奇跡

 「頭にあるのはルーティンを守っているかどうかだけ。歓声もヤジも聞こえない」。15年W杯前、「今は究極に近い形」と五郎丸選手は自信にあふれていた。

 15年9月19日、W杯初戦。優勝候補の南アフリカ戦で次々とキックを決めた。特に後半は圧巻だった。接戦に英国・ブライトンの会場の緊張感が高まる中、4度のペナルティーゴール(PG)をすべて成功。後半28分には自らトライし、ゴールキックで29―29と試合を振り出しに戻した。スタンドからは「ジャーパン、ジャーパン」の大合唱が起きた。

 勢いに乗った日本は終了間際の逆転トライで勝利。当時世界3位の南アフリカをW杯通算1勝の日本が倒した金星は、「スポーツ史上最大の番狂わせ」「ブライトンの奇跡」と世界を驚かせた。キックだけでチームの34点のうち19点を挙げ、勝利の立役者となった五郎丸選手。試合後、記者から「この勝利は奇跡か」と問われ、こう答えた。

 「必然です。ラグビーに奇跡なんてありません」

 キックは9本蹴って7本成功。「失敗しても動揺は全然ありませんでした。精神的にも肉体的にも4年間、鍛え上げた結果です」。日本代表のトレーニングで分厚くなった胸をさらに張って答えた。当時のエディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチがW杯で戦えるチームにするためにとった手段は「世界一の練習量」。代表合宿は3部練習で、朝6時からのウエートトレーニングに加え、午前中も夕方も選手は走り続けて力をつけた。

 忍者のようなポーズが印象的な五郎丸選手の「ルーティン」。大人も子供もまねる社会現象になった。ボールを回してから立て、後ろに3歩、横に2歩動き、蹴る位置についてから、右腕を振って重心移動をイメージする。最後に、重心を意識するために両手を合わせて中腰になる。プレースキックを蹴るまで約45秒と比較的長かった。

 15年W杯前の1月、東大阪市花園ラグビー場であったトップリーグプレーオフ準決勝の神戸製…

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