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滝野隆浩の掃苔記

社会部・滝野隆浩専門編集委員のコラム。

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滝野隆浩の掃苔記

希林さんの墓前で学ぶ

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希林さんの墓で手を合わせる長江曜子・聖徳大教授
希林さんの墓で手を合わせる長江曜子・聖徳大教授

 <滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)>

 お墓博士の長江曜子・聖徳大教授と行くお墓めぐり。9回目は2018年9月に亡くなった女優、樹木希林さんの墓である。東京・南麻布の寺に向かう道すがら、先生はしきりに、サルトル、ボーボワールの話をしていた。

 パリの美しいモンパルナス墓地まで行ったらしい。そこに眠る2人の哲学者は婚姻という制度を否定したうえ、他の人との恋愛はいいが秘密はなし、と決めていた。ああ、先生は夫婦のあり方の話をしているのだと気づく。希林さんと、半年後に亡くなった夫のロックンローラー、内田裕也さんは、風変わりな夫婦だった。別居はしても離婚はしない。夫が勝手に出した離婚届は無効と訴え、希林さんは裁判までやった。

 某大国の大使館と隣接する格式ある寺の墓地には、野鳥の声だけが響いている。墓はすぐに見つかった。壮麗な庵治石(あじいし)の墓には「内田家之墓」と刻まれていた。希林さんの遺骨が、型破りな生き方をした裕也さんと一緒に、この「家墓」にある。そう考えると感慨深い。インタビューなどで語ったことを集めて没後に出た本「一切なりゆき」にはこんな言葉がある。「私がしっかり土台をつくっておきさえすれば、この家族の絆は…

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