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ナワリヌイ氏の処遇 ロシアの人権感覚を疑う

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 ロシアの刑務所に収監されている反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の健康状態が悪化している。ただちに治療を受けないと命に関わると懸念されている。

 昨年夏にロシア国内で神経剤による襲撃を受け、一時は生死の境をさまよった。今年1月に療養先のドイツから帰国した際、当局に逮捕された。

 2月には、過去に受けた執行猶予付き有罪判決が2年半の実刑に切り替えられた。ナワリヌイ氏は「ぬれぎぬ」と主張している。

 反政権派の口封じだとして、欧米諸国はロシア政府に釈放を求めてきた。

 収監先の刑務所は、ロシアの中でも受刑者に厳しいとされる。ナワリヌイ氏は背中の痛みなどの不調を訴えたが、治療を受けられなかった。抗議のハンガーストライキを続け、さらに体調を崩した。

 弁護士らによると、熱やせきがあり、重い腎臓疾患が疑われるという。刑務所内で、点滴などの処置を受けてはいるが、本格的な治療とはいいがたい。

 米政府は、ナワリヌイ氏が死亡した場合は「ロシアは報いを受けることになる」と警告し、制裁強化を示唆した。

 ロシアでは、2009年に反政権派の人物が獄中死している。政府の腐敗を告発したセルゲイ・マグニツキー弁護士だ。ロシアは否定するが、留置場で適切な医療を受けることができず、当局者から拷問を受けて死亡したとされる。

 英国人作家のJ・K・ローリング氏ら世界的な著名人約80人は、プーチン大統領に宛てた公開書簡で、ナワリヌイ氏に治療を施すよう求めている。

 21日には、ナワリヌイ氏への連帯を表明するデモがロシア各地で起きた。警察は参加者2000人近くを拘束し、鎮圧した。人権感覚を疑う措置だ。

 ウクライナ問題などを巡り、欧米諸国と激しく対立してきたロシアだ。ナワリヌイ氏の容体次第で緊張は一層高まる。プーチン氏は「一線を越えないことを望む」と、欧米側をけん制し、対決姿勢を示している。

 ロシアは民主国家の旗を掲げている。それならば、異論を唱えるナワリヌイ氏のような人物の人権こそ、守らなければならない。

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