「流域治水」関連法が成立 河川沿いを「貯留機能保全区域」に

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約94万立方メートルを貯水した鶴見川多目的遊水地=横浜市港北区で2019年10月13日午前6時半ごろ(国土交通省京浜河川事務所提供) 拡大
約94万立方メートルを貯水した鶴見川多目的遊水地=横浜市港北区で2019年10月13日午前6時半ごろ(国土交通省京浜河川事務所提供)

 自治体や企業、住民が協働して河川の流域全体で治水の実効性を高める流域治水関連法が28日、参院本会議で可決、成立した。浸水被害の危険がある地区の開発規制や避難対策が柱。今年11月までに順次施行する。

 気候変動で降雨量が増加し、従来の堤防やダムで対応しきれない水害が多発していることから、河川法など関係する法律9本を一括で改正して抜本的な対策を講じる。河川の氾濫をできるだけ防ぎ、被害を最小限に抑えるなどの方策を充実させる。豪雨で氾濫するリスクが高い河川流域で貯水機能を持つ場所を整備し、住宅や福祉施設の建築を許可制とするなどの対策を進める。

 貯水対策では、農地など河川沿いの低地を「貯留機能保全区域」に指定。盛り土などの開発行為は事前の届け出を義務づける。氾濫が起きやすい河川の周辺地域に住宅や高齢者福祉施設などを建てる際は許可制とし、都道府県などが居室に浸水深以上の高さがあるかや洪水で倒壊しない強度かを確認する。

 高齢者福祉施設で適切な避難計画が策定され、訓練が行われているかを市区町村が確認し、施設管理者に助言、勧告することができる。民間ビルの地下に貯水施設を整備した場合に固定資産税を減免する規定も設けた。現在は大規模河川について市区町村が作成しているハザードマップを中小河川にも拡大する。国土交通省は2025年度までに1万7000の河川で作成することを目指す。【岩崎邦宏】

台風19号で氾濫免れた鶴見川の流域治水

 2019年の台風19号では100人超が死亡し、多くの河川が氾濫して被害が出た。だが、東京都町田市から横浜市鶴見区の東京湾に流れる1級河川の鶴見川流域は氾濫を免れた。背景には、関係者が流域治水の実現に向けて準備を重ねたことがある。

 国土交通省京浜河川事務所によると、鶴見川は全長42・5キロ、流域人口は約200万人。かつては流域で堤防の決壊が度々起こり、1958年の狩野川台風の際は約2万戸超が浸水した。被害を教訓に、国や地元自治体は堤防を整備し、遊水地の設置や水はけの良い緑地の保全を進めた。

 台風19号の際は、鶴見川に隣接する多目的遊水地(横浜市港北区)に約94万立方メートルの水が流れ、川の水位を約30センチ下げる効果があった。この遊水地は最大390万立方メートルの水をためられる。国交省幹部は「遊水地がなければ氾濫危険水位を超えていた恐れがある」と指摘する。流域にはこのほか、商業施設の地下やテニスコートに雨水をためる調整池が約5000カ所あり、300万立方メートル超の水がためられる。

 熊本県立大の島谷幸宏特別教授(河川工学)は「河川に水を集めないよう、特に都市部ではあらゆる場所に小さな貯水施設を分散して造る必要がある。国は河川流域の全員が参加する治水の実現に向けた方策を考えるべきだ」と指摘する。【岩崎邦宏】

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