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余録

毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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 「馬で郊外の小ぢんまりした住居や農家の傍(かたわ)らを通り過ぎると、家の前に日本人好みの草花を少しばかり植え込んだ小庭をつくっている」。幕末に来日した英国の園芸家、R・フォーチュンは記している▲「日本人の国民性の著しい特色は、下層階級でもみな生来の花好きであることだ」「もしも花を愛する国民性が人間の文化生活の高さを証明するならば、日本の低い階層の人々は英国の同じ階級の人に比べるとずっと勝って見える」▲フォーチュンは江戸の染井(そめい)村を見て世界最大の園芸村だと驚嘆し、古くから斑(ふ)入りの観葉植物を育ててきた園芸技術をたたえた。攘夷(じょうい)で騒然とする幕末の日本の旅で、彼は知られざる“園芸大国”を発見したのだ(幕末日本探訪記)▲さて、昨年来のコロナ禍は、そんなご先祖譲りの園芸好きの血をあらためて思い起こさせることになった。ホームセンターなどでは花や観葉植物、野菜やハーブの種や苗、園芸用品がよく売れているという。巣ごもりガーデニングだ▲きょうからゴールデンウイーク、それも東京や大阪などではステイホームが求められる緊急事態宣言下の大連休だ。おりしも新緑がまぶしい季節、マンションのベランダのガーデニング術もネットですぐに教えてもらえる時代である▲コロナ疲れで気分のふさぎがちな方には、土や草木との語らいが癒やしとなることもあろう。貧しい家にも花を植え、英国の園芸家を感動させたご先祖を思い浮かべ、心の豊かさについて尋ねてみるのもいい。

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