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入管・難民問題

国外退去処分になった外国人の入国管理施設での扱いが注目を集めています。難⺠に厳しいと言われる日本。人権は守られている︖

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「うそで血吐けるのか」入管で死亡の女性家族「記録と映像確認したい」

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ウェブ会議システム「Zoom(ズーム)」を使って記者会見に臨む、名古屋入管で収容中に死亡したスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)の母親(中央)と妹2人=参院議員会館で2021年4月16日、後藤由耶撮影 拡大
ウェブ会議システム「Zoom(ズーム)」を使って記者会見に臨む、名古屋入管で収容中に死亡したスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)の母親(中央)と妹2人=参院議員会館で2021年4月16日、後藤由耶撮影

 彼女は、なぜ死ななければならなかったのか。スリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が、名古屋出入国在留管理局で収容中の3月6日に死亡した問題で、収容中に適切な医療を受けさせてもらっていなかったのではないかとの指摘が遺族や支援団体、国会議員から相次いでいる。入管法改正案を審議する衆議院法務委員会では、審議のために収容中の様子を記録した監視カメラ映像を提出するよう求める声が出ているが、入管側は提出を拒んでいる。なぜビデオが重要なのか。関係者の声に耳を傾けた。【和田浩明/統合デジタル報道センター】

「娘の死、自分の目で確かめたい」と母親

 「非常に残念。娘が亡くなった様子は全く見ていない。自分の娘が本当に亡くなったのか、自分の目で確かめたい」。ウィシュマさんの母親、スリヤラタさん(53)は4月27日、立憲民主党の議員らが開催したヒアリングにスリランカからオンライン参加し、当時のビデオ映像の提供を入管が拒んでいることを批判した。

 ヒアリングには次女で妹のワユミさん(28)、三女の妹ポールニマさん(26)らも参加。映像の公開拒否について「入管全体の施設を見たいわけではなく、姉の部屋が見たいだけです。中間報告にはビデオに基づく細かい記録がある。記録に合わせて自分たちで(映像を)確認したい」と話した。

名古屋出入国在留管理局(名古屋市)に収容され、死亡したスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)=家族提供 拡大
名古屋出入国在留管理局(名古屋市)に収容され、死亡したスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)=家族提供

 遺族らは、適切な治療を受けられていたのか疑問だとも指摘する。スリヤラタさんは「ウィシュマは長期間苦しんだと聞いている。なぜ早く病院に運び治療を受けさせなかったのか、(上川陽子)法務大臣に聞きたい」と話した。ワユミさんとポールニマさんらは5月初旬から日本を訪れる予定だ。

 法務省・出入国在留管理庁は4月9日にウィシュマさんの死亡に関する中間報告書を発表した。ワユミさんらによると、日本語版と英訳をスリランカ外務省から受け取ったが、報告書に関する日本政府からの直接的な説明は「一切無い」という。

「うそをつける性格ではない」と遺族

 中間報告や支援者らによると、ウィシュマさんは2017年6月に来日して日本語学校に入学。20年8月に当時の同居人からのDV(ドメスティックバイオレンス)を訴えて警察を訪れた。ところが、警察は彼女を不法残留容疑で逮捕し、ウィシュマさんは名古屋入管に収容された。21年1月中旬ごろから吐き気や食欲不振、体のしびれなど体調の不良を訴え、「容態観察」のため単独室に移動。この際、職員に「他の被収容者に迷惑になる」と言われたという。

 2月5日に外部の病院の消化器外科、3月4日には精神科で診療を受けたが、本人が希望していた点滴は受けられなかった。体重は2月23日までに約20キロ減少。3月6日に居室内で心肺停止状態で倒れているのが発見され救急搬送されたが、病院で死亡が確認された。

 中間報告書には、ウィシュマさんの状態に関し、病気になることで一時的に収容を解く「仮放免」をしてもらいたいとの思いが作用した可能性があると、4日に診察した医師が診断したとの記述がある。これに関しスリヤラタさんらは「うそをつく性格ではない。報告書には血を吐いたと書いてある。うそで吐けるわけがない。100%、体調が悪かったに違いない」と強調した。

「ビデオ開示、問題ないはず」と階議員

 ウィシュマさんが死に至る期間の監視カメラ映像の閲覧は、野党の国会議員らも求めている。衆院法務委員会で行われている入管法改正案の審議に関連して、収容者の処遇などが適切かどうかを国政調査権に基づいて究明するためだ。追及する中心議員の一人である立憲民主党の階猛議員に、考え方などを聞いた。

立憲民主党の階猛議員=2021年4月27日、和田浩明撮影 拡大
立憲民主党の階猛議員=2021年4月27日、和田浩明撮影

 東日本入国管理センター(茨城県牛久市)で、収容中に死亡したカメルーン人男性は、直前に居室内で苦しんでいた様子が監視カメラの映像に収められていた。階議員は、遺族による損害賠償請求裁判で開示されたことに言及。「今回も同じような映像があるのではないか。本人の様子を映すビデオなら保安上の理由は関係がない」と強調した。

 ビデオ記録の閲覧については、最終報告書の早期提出とともに、今後とも法務省・入管側に強く求めていく考えを示した。

 ウィシュマさんは収容前のDV被害も訴えていた。この点に関し階氏は、「DV被害を受けていた人が、なぜこんな目に遭わなければならなかったのか。入管行政がおかしいのではないかというのは、誰もが思う」と指摘。「DV被害者であれば仮放免してシェルターで保護することもできたのではないか。身元引受人もいた。オーバーステイだから即強制収容というのはおかしい」と述べた。

 また、昨年成立が見送りとなった、検察幹部の定年延長の特例を可能にする検察庁法改正案を追及した経緯などから「法務省は他人に厳しく自分に甘い。法の支配と言っている自分たちが一番それを踏みにじっている。そうした問題の中で、氷山の一角としてクローズアップされているのがウィシュマさんの問題だ」との認識も示した。

立憲部会、入管法反対を決定

 一方、立憲民主の法務部会は27日、入管法改正案を審査したうえで反対すると決定したと部会長の真山勇一参院議員が発表した。記者会見で「ウィシュマさんの事件は入管の体質を物語っており、何が行われているか全く見えてこない。入管は(収容者の)死亡事件を繰り返している。まず衆院で事件の真相が解明できなければ、法案の審議はできない」などと強調した。

 同党の外国人受け入れ制度・多文化共生プロジェクトチーム座長の石橋通宏参院議員も、入国管理や難民認定は「抜本的に変えなければ国際的な批判に応えられない」と指摘。野党6会派で参院に提出した、独立委員会による難民申請認定などを盛り込んだ難民等保護法案への支持を訴えた。

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