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変わる米アカデミー賞 多様性の意義知る契機に

 多様性を重視する社会の実現に向け、人々の意識を変えていく契機にしたい。

 米映画界最高の栄誉とされるアカデミー賞で、女性やアジア系などマイノリティーが躍進した。

 中国出身のクロエ・ジャオ監督が、白人以外の女性として初の監督賞に輝いた。車上生活の高齢者を描く「ノマドランド」を手がけた。昨年に続くアジア系の受賞だ。

 韓国人移民の家族をテーマにした「ミナリ」のユン・ヨジョンさんには助演女優賞が贈られた。

 ほかにも、助演男優賞に黒人俳優のダニエル・カルーヤさん、メーキャップ・ヘアスタイリング賞には初の黒人女性となるミア・ニールさんらが選ばれた。ニールさんは受賞スピーチで「ガラスの天井を打ち破った」と語った。

 アカデミー賞は近年、「白すぎるオスカー」として批判された。俳優部門で非白人が一人もノミネートされなかったためだ。これを受け、賞を選考する映画芸術科学アカデミーは、白人男性に偏った会員構成の見直しを進めてきた。

 多様性の尊重は差別の解消につながるだけでなく、作品に豊かさをもたらす。

 ジャオ監督の「ノマドランド」は、格差社会の底辺で車上生活を送る人々に温かなまなざしを注ぎ、作品賞も受賞した。見過ごされがちな世界の片隅に光を当て、多くの人の心を動かす。芸術にはそんな力がある。

 「隔たる世界の2人」は米社会における根深い黒人差別を描き、短編実写映画賞を受けた。共同監督のトレイボン・フリーさんは「どうか、他人の痛みに無関心でいないでください」と訴えた。

 コロナ禍が世界を覆うなか、貧困や暴力が、女性やマイノリティーを苦境に追いやる。米社会では昨年来、アジア系へのヘイトクライムが相次いでいる。

 アカデミーは、2024年から作品賞のノミネートで多様性に配慮する新基準を設けるという。しかし基準で縛るだけでは真の改革とは言えない。

 今回、マイノリティーが躍進したことは、新しい時代への一歩である。作り手や出演者の属性にかかわらず、すぐれた作品が正当に評価されるべきだ。それが当たり前となる世界を実現したい。

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