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「相談」もなく事実上の休業命令 寄席の意地、潰された4日間

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一転して休業を決めた新宿末広亭=東京都新宿区で2021年4月26日、中嶋真希撮影
一転して休業を決めた新宿末広亭=東京都新宿区で2021年4月26日、中嶋真希撮影

 緊急事態宣言の発令後も、東京都の無観客開催の要請に応じずに営業を続けていた都内の寄席4軒が28日、都から新たに休業要請を受ける形で5月1~11日の営業休止を決めた。開催の判断がわずか4日で一転、休業を余儀なくされた寄席の“舞台裏”を探った。【油井雅和/デジタル報道センター】

突然の無観客要請、態度硬化

 「大衆娯楽である寄席は、社会生活の維持に必要なものだと判断した」。宣言発令前日の24日、寄席4軒とともに営業継続を発表した落語協会、落語芸術協会はこう訴え、強気の構えを見せていた。都の要請にあった「社会生活の維持に必要なものを除く」という一文をあえて引用、営業の正当性を強調したのだ。

 背景には、寄席側が苦境に陥っていることがある。2回の緊急事態宣言により休業や時短営業を迫られ、収益が悪化した寄席にとって、大型連休は正月、お盆と並ぶ「書き入れ時」だ。5月1日には新宿末広亭で、落語芸術協会の春風亭昇太会長らも出演する新真打ち4人の昇進披露興行を予定するなど、着実に準備をしてきた。

 都内の寄席の定員は数百人と小規模だが、客数をさらにその半分に制限。換気、消毒の徹底にも努めてきた。観客が大声を上げたりすることもなく、これまで新型コロナウイルスの感染者が出た経緯もない。定員325人の末広亭の1日の客は50人程度まで減り、ガラガラの状態だった。

 そんな状況の中であった都の無観客開催の要請。オンラインで配信しようにも、寄席には専用の設備がなく、事実上の休業要請に等しいものだった。事前の連絡はなく、寄席の現状が伝わっていないことも寄席側を落胆させた。これまでは要請を受け入れてきたが「今度ばかりは」と態度を硬化し、営業継続を自主判断した。

 ネット交流サービス(SNS)や有識者などから営業継続に賛意や理解を求める声が相次いだことも「追い風」になった。ツイッターでは「さすが寄席、粋ですね」などの声が高まり、寄席の席亭も落語家も胸をなでおろした。

 落語文化に詳しい元文部科学官僚の寺脇研さんは取材に「寄席を止める科学的根拠はないとハッキリ言わないといけない。寄席は戦時中であっても、たとえ客が少なく赤字であっても開け続けてきた。寄席には若手を養成するという役割もある」と異議を唱える。落語芸術協会の田澤祐一事務局長も「無観客で寄席をやれというのは、あまりにも私たちの世界を知らなさすぎる。足を運んでくださるお客様を裏切ることはできないんです」と話した。

「示しつかぬ」動いた国と都

 しかし寄席側の発表直後から、休業を求める国側の動きが進んだ。

 口火を切ったのは新…

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