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パートナーシップ制度導入、自治体で温度差 性的少数者の思いは

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自宅の前で愛犬「つぶ」を抱える田中昭全さん(左)と川田有希さん。カフェのオープンに向け、リノベーション中だ=香川県三豊市詫間町で2021年4月13日午後3時42分、西本紗保美撮影 拡大
自宅の前で愛犬「つぶ」を抱える田中昭全さん(左)と川田有希さん。カフェのオープンに向け、リノベーション中だ=香川県三豊市詫間町で2021年4月13日午後3時42分、西本紗保美撮影

 性的少数者のカップルを公的に認めるパートナーシップ宣誓制度は自治体ごとの取り組みで、香川県内には導入を巡って温度差もある。婚姻のような法的な効力がないこともあり、同性婚の実現に向けて国を相手に訴訟を起こすLGBTカップルもいる。

 「大多数の人は人生の伴侶に異性を選びます。しかし、一部の人は同性を選びます。それは主義とか嗜好からそうするのではなく、普通に生きていて自然とそうなるのです」

 2020年1月に四国で初めてパートナーシップ宣誓制度を導入した三豊市。公共施設などには同性愛が特別でないことをアピールする文章とともに、白いドレス姿の女性カップルが寄り添うポスターが貼られている。

自宅のサンルームでくつろぐ田中昭全さん(右)と川田有希さん。「力を合わせて改装してきた自宅を互いに相続できるようにしたい」と語る=香川県三豊市詫間町で2021年4月13日午後3時44分、西本紗保美撮影 拡大
自宅のサンルームでくつろぐ田中昭全さん(右)と川田有希さん。「力を合わせて改装してきた自宅を互いに相続できるようにしたい」と語る=香川県三豊市詫間町で2021年4月13日午後3時44分、西本紗保美撮影

 その写真はSNSで若者を中心に人気の写真家、岩倉しおりさんが市内の海岸で撮影した。ポスターの製作を手がけた市内在住のデザイナー、田中昭(あき)全(よし)さん(43)は「LGBTの当事者がSNSで積極的に発信するようになり、同性カップルが若い人に受け入れられ始めている。父母ケ浜の人気で観光客や若い移住希望者も増えている」と語り、先進的な同市でマイノリティーへの理解が深まることに期待を寄せる。

 田中さんはパートナーの川田有希さん(36)と男性同士のカップルとして、07年から市内で一緒に暮らしている。2人の名字を取って周囲からは「川田中家」と呼ばれ、同市が制度を導入したのに合わせ、パートナーシップ宣誓した。

田中昭全さんがデザインした香川県三豊市のパートナーシップ宣誓制度を紹介するポスター(三豊市提供) 拡大
田中昭全さんがデザインした香川県三豊市のパートナーシップ宣誓制度を紹介するポスター(三豊市提供)

 一方、県全体を見ると、宣誓制度を巡る自治体の取り組みは一様ではない。三豊市を皮切りに1年半弱で6市町が導入したが、17年から検討を続けていた丸亀市は、市議会議員から「急すぎる」「1年は勉強期間が必要」などと反対意見が噴出。18年4月に導入が見送られて以降、議論は棚上げされている。

 丸亀市が同年5~6月に行ったアンケートでは、制度の導入を「必要」「どちらかといえば必要」と答えた市民の割合は約8割に上った。しかし、年代別で見ると60代は5割強、70歳以上は4割弱と高齢世代で賛成の割合が低いことが分かった。同市人権課の担当者は「まずは啓発活動が必要と考えている」と話すが、今のところ目立った動きはない。

全国で104自治体が導入

 都道府県単位では現在、大阪府、茨城、群馬両県が宣誓制度を導入しているが、香川県ではその予定はないという。県人権・同和政策課の担当者は「宣誓制度は、基本的には住民票を管理する市町の仕事。県民の間で賛否が分かれている上、自治体ごとに考え方が異なる。それを無視することはできない」と説明する。

香川県丸亀市で行われたLGBT関係者のパレードに手をつないで参加する田中昭全さん(右端)と川田有希さん=2019年8月25日(田中さん提供) 拡大
香川県丸亀市で行われたLGBT関係者のパレードに手をつないで参加する田中昭全さん(右端)と川田有希さん=2019年8月25日(田中さん提供)

 全国では15年に東京都渋谷区が初めて導入し、LGBT関係者でつくる「自治体にパートナーシップ制度を求める会」によると、4月26日時点で全国の104自治体が導入している。

 この制度はあくまで自治体判断の取り組みで、法律上の効力はない。田中さんと川田さんが暮らす自宅は田中さん名義だが、婚姻関係がある夫婦のように川田さんを法定相続人にすることはできない。2人は「最終的な目標は同性婚の実現」として、国を相手取った全国一斉訴訟の関西原告団に参加している。

 この訴訟では21年3月、札幌地裁が同性婚を認めない現行制度について初の違憲判断を示した。川田さんは「北海道の原告が実質的には勝訴を勝ち取った。僕たちも後に続かなきゃという気持ちです」と力を込める。

 それでも2人は宣誓制度の意義も大きいと考えている。2人が三豊市に届け出たことを報道番組で知った田中さんの叔父は、祝い金を渡して祝福してくれた。田中さんは「世間的にけじめを付けられた。誰にも相談できず苦しんでいた子ども時代と比べたら、この制度は革新的だと思う」と笑顔を見せる。

 全国一斉訴訟の関西弁護団の佐藤倫子弁護士(45)=三豊市在住=は「少数者の権利を多数決で決めるべきではなく、市民の賛否が分かれているから宣誓制度を導入しないというのは問題だ。誰もが生きやすい社会のため、自治体には積極的な制度導入を求めたい」と訴えている。【西本紗保美】

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