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朝7時。身を切るような寒さの中、「第八長洋丸」は漁場を目指し、男鹿の脇本漁港を出港した。鉛色の海に出ると風は勢いを増し、乱舞する雪が頬(ほお)を打つ。
ごく僅(わず)かな期間しか行われない、秋田に伝わる「季節ハタハタ漁」の始まりだ。
ハタハタは、冬の到来を告げる雪雲から雷鳴が轟く12月ごろ、産卵のために海底から大群を成して沿岸にやってくる。その姿を通し、雷神が遣わした「神の魚」として古くから崇められ、秋田の文化的営みと密接してきた。
その神の魚を求めて、海に畏敬の念を抱きながら、極寒の荒波と漁師は対峙(たいじ)する。命をかけた漁を初めて間近にしていると、シャッターを切る目頭が、次第に熱くなっていった。故郷で受け継がれてきた尊い願いが、胸に迫ってきたからだ。
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