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各地の祭り コロナ中止再び 「伝統を伝えられない」危機感

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2年連続で博多どんたく港まつりが中止となり、観客のいない明治通りを練り歩く「博多松囃子」の一行=福岡市博多区で2021年5月3日午後1時45分、矢頭智剛撮影
2年連続で博多どんたく港まつりが中止となり、観客のいない明治通りを練り歩く「博多松囃子」の一行=福岡市博多区で2021年5月3日午後1時45分、矢頭智剛撮影

 大型連休中に例年国内最大規模の人出でにぎわう福岡市の「博多どんたく港まつり」はパレードが今年も全面中止となったが、どんたくの起源とされる伝統行事「博多松囃子(まつばやし)」は3日、人数を減らして2年ぶりに街の中を練り歩いた。2年目に突入した新型コロナウイルス禍で今年も人が集まる催事の中止が余儀なくされる一方、各地の関係者が伝統や文化の継承を手探りしている。

 3日朝、福岡市博多区の櫛田神社には国の重要無形民俗文化財「博多松囃子」の関係者が集まり、神事があった。「皆さん、お酒は飲まないように」。関係者が口をつけるお神酒は中止となり、神事を終えると馬にまたがった三福神とともに街の中に繰り出した。

 例年なら200万人以上の見物客が集まる博多どんたく港まつりのパレードで先頭を歩くはずだったが、パレードは2年連続中止になった。街頭に見物客はおらず、参加者を4分の1に減らした一行のみがマスク姿で市中心部を歩いた。博多松囃子振興会の堀武志会長(65)は「少しでも博多の人が前を向いてほしい。街が元気になるよう、来年こそは普通通りにできるようにしたい」と願った。

 同じく連休中に開催予定だった山口県下関市の「しものせき海峡まつり」も中止となったが、3日は壇ノ浦の戦いで滅びた平家一門をしのぶ「先帝祭」など二つの神事が関係者だけで実施された。下関観光コンベンション協会専務理事の中川清隆さん(64)は「長く続く歴史の中で伝統行事の2年連続中止は避けたかった。来年につなげたい」と話す。神事の様子は動画配信するという。

 7月に男たちが山笠を担いで福岡・博多の街を走る伝統行事「博多祇園山笠」も2年連続で見送りとなったが、今年は市内12カ所の会場で武者人形などを豪華に飾り付けた「飾り山笠」の展示は2年ぶりに実施されることになった。

 17人いる山笠人形師の一人で今年初めてメインで制作に当たる小副川太郎さん(43)は「人形師の数が減る中で、山笠を請け負える人の確保が難しくなっている。飾り山笠の制作は年に1回の数少ない機会。今年は展示があってよかった」と腕を磨く機会が確保され、胸をなで下ろす。本来は昨年デビューする予定だったが、持ち越されていた。

 疫病退散が起源で700年以上の歴史があるとされる博多祇園山笠だが、山笠を担ぐ舁(か)き手も少子高齢化などを背景に人手不足が課題となっている。ある関係者は「コロナの影響で舁き手同士で集まる機会はめっきり減ってしまった。つながりが薄くなり、来年実施されたとしても舁き手が集まるか心配だ」と話す。【山口桂子、吉住遊、土田暁彦】

識者「1~2年やらないロスは大きい」

 地域の祭りに詳しい九州産業大の須永敬教授(民俗学)によると、福岡県内の無形民俗文化財に指定された祭りの約半数が新型コロナウイルスの影響で2020年の開催を断念した。神事のみ実施するなど規模を縮小したケースを含めると約7割が一般参加を取りやめており、全国的にも同様の傾向がみられるという。

 「伝統行事はそもそも主体的に伝えてきた人たちがいて今がある。これまでも戦争や疫病をくぐり抜けた歴史がある」と須永教授。「担い手不足が深刻となる中、コロナ禍で祭りそのものをやめた事例もある。人が伝える民俗文化財は、稽古(けいこ)などの準備をして実施するもので1~2年やらないロスは大きい」と話す。

 NPO法人「日本お祭り推進協会リアルジャパン’オン」の佐々木信也・代表理事(51)は「祭りは世代を問わず地域のコミュニティー作りの一端を担っている」と指摘。そうした場が新型コロナウイルスの影響で失われていることに対し「地域の文化や慣習を継承できないだけでなく孤立する人が生まれる可能性がある」と危惧する。

 そんな中、国も対応に乗り出した。無形の文化財について既存の「指定制度」に加えて基準の緩い「登録制度」の新設を盛り込んだ改正文化財保護法が4月に成立。無形の文化財は祭りの他、郷土料理などを想定しており、「登録」されれば、国が文化財保存や公開に必要な経費を補助する。【山口桂子】

コロナ禍で中止や規模縮小を決めた主な祭り

5月2~4日 しものせき海峡まつり(山口県下関市)

  3、4日 博多どんたく港まつり(福岡市)

  15、16日 三社祭(東京都台東区)

6月14~16日 北海道神宮例祭(札幌市)

7月1~15日 博多祇園山笠(福岡市)

  1~31日 祇園祭(京都市)

  23~25日 戸畑祇園大山笠(北九州市)

【新型コロナウイルス】

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