子育て中45歳で大学院に 起業志す若者を支援する母の生き方

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京大起業部インターナショナル代表の赤城賀奈子さん=京都市で2021年2月17日午後5時44分、福富智撮影 拡大
京大起業部インターナショナル代表の赤城賀奈子さん=京都市で2021年2月17日午後5時44分、福富智撮影

 社会人経験を積んだ後に京都大大学院で学び直し、起業を目指す世界の若者たちを支援する女性がいる。任意団体「京大起業部インターナショナル」(KUIEC)代表の赤城賀奈子(かなこ)さん(49)=京都市=だ。家族に支えられながら家庭と学業を両立し、在学中にKUIECを設立した。「どういう状況が人生の『成功』といえるのか、考え方を多様化させたい。自分の生き方も、その一つのロールモデル(模範)になれば」

家族で共有「学ぶことは面白い」

 赤城さんは滋賀大を卒業後、通販会社勤務や父親の会社を受け継いで「第二創業」を果たし、夫婦で起業を経験。父親の会社は靴の小売業で、買い付けやメーカーとの商品開発などに取り組んだ。地元商店街で理事も務め、デビットカードの導入や商店街共通のサイト作りにも関わった。

 33歳で結婚。2007年には知人を介して知った出版社の勧めもあり、自分の考え方をまとめた本を出版し、その後、セミナーやコンサルティングの世界に進出した。大学卒業時に思い描いたことは、全てかなえたが、「新たに情熱を持って、取り組めることを見つけたい」。そして、京都大経営管理大学院に入学。45歳だった。

 当時、長男は小学2年生。京大の学食で一緒に食事もした。「長男も私がしていることは分かっていた。学ぶことは面白い、ということが家族内で共有されていた」。夫や両親のサポートで勉学に集中できた。

留学生や女性のニーズに応えたい

 KUIECは19年1月に設立。きっかけは、メンター(指導者)就任を頼まれたある団体の会合で、メンバーが男性しかいなかったこと。これまで留学生や女性から起業について尋ねられることがよくあり、多様なニーズに応える場が必要だと痛感した。「女性」「インターナショナル」をキーワードにKUIECへの参加を呼び掛けると、口コミなどで25人が集まった。

第2回「ジャパン・ハッカソン」のオープニングセレモニーでスピーチする赤城賀奈子さん=ジャパン・ハッカソン実行委員会提供 拡大
第2回「ジャパン・ハッカソン」のオープニングセレモニーでスピーチする赤城賀奈子さん=ジャパン・ハッカソン実行委員会提供

 同3月に経営学修士(MBA)を取得。KUIECには、今では京大の学生や研究員、卒業生ら計約200人が参加し、出身も世界約40カ国・地域と幅が広がった。日本企業への就職を希望するメンバーに知り合いを紹介したり、起業したメンバーが他のメンバーに助言したりすることもある。

 最近は「ハッカソン」というイベントに力を入れる。プログラミングを意味する「ハック」と「マラソン」を組み合わせた造語で、参加者が課題に対して解決策を提案する。21年2月には、世界46カ国・地域から232人がオンラインで参加し、最先端の科学技術を用いたビジネスアイデアを発表し合った。

2月5~7日にオンライン上で開催された第2回「ジャパン・ハッカソン」のオープニングセレモニー=ジャパン・ハッカソン実行委員会提供 拡大
2月5~7日にオンライン上で開催された第2回「ジャパン・ハッカソン」のオープニングセレモニー=ジャパン・ハッカソン実行委員会提供

 最優秀に選ばれた「Ubuntu Hub」は、ナイジェリアとインドネシアの計4人で構成。ブロックチェーン(分散型台帳)技術などを活用し、新型コロナウイルス禍で学校に通えない子どもに、オフラインで低価格の教育サービスを提供するアイデアを披露した。同チームのパトリック・オチエジャさんは「コロナが拡大する中でアイデアが生まれた。教育を受ける機会がなく、困っている人たちはインターネットを使えないことが多いので、そこを解決したいと思った」と語る。

 今も子育てを続けながら、若者たちの挑戦を後押しする赤城さん。「今後は日本人が起業家マインドを持てるような、教育プログラムを提供する機会を増やすことに力を入れたい」と夢は尽きない。【福富智】

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