「土の味わい楽しんで」 腕時計に越前焼の装飾 魂注ぐ「匠の刻」

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文字盤の周りに越前焼の装飾を施した「匠の刻」。文字盤は越前漆器。税込み7万7000円=福井県越前町で2021年4月14日午後1時55分、横見知佳撮影 拡大
文字盤の周りに越前焼の装飾を施した「匠の刻」。文字盤は越前漆器。税込み7万7000円=福井県越前町で2021年4月14日午後1時55分、横見知佳撮影

 福井県の伝統工芸品「越前焼」などを装飾に使った腕時計「匠(たくみ)の刻(とき)」(税込み7万7000円)が越前焼工業協同組合から販売されている。文字盤を引き立たせる部品に、陶磁器としては珍しい薄さである厚さ1ミリの「薄作り」が用いられており、職人の卓越した技術が感じられる逸品だ。

 粘り強い土を使う越前焼は硬く焼き締まり、釉薬(ゆうやく)を塗らなくても水が漏れないほどだ。越前町の光窯、司辻(かさつじ)健司さん(48)はこの特徴を生かし、ろくろで薄作りの盃(さかずき)を作り、「匠」と名付けて販売している。

腕時計「匠の刻」の越前焼のパーツを手がけた越前焼職人の司辻健司さん=福井県越前町の光窯で2021年4月14日午後1時49分、横見知佳撮影 拡大
腕時計「匠の刻」の越前焼のパーツを手がけた越前焼職人の司辻健司さん=福井県越前町の光窯で2021年4月14日午後1時49分、横見知佳撮影

 一方、「越前焼にしかない薄作りの技術を使い、その良さを広めたい」と考えていた同組合の大瀧和憲営業課長。高価な越前焼きを組み込んでも購入してもらえる商品として、腕時計に着目。そして司辻さんの「匠」の底から着想を得て、薄いリング状に加工して部品として使う方針を打ち出した。2018年秋にクラウドファンディングで100万円を超える資金が集まると、時計作りに向けた挑戦が始まった。

 リング状の越前焼は同じく福井県の伝統工芸品である越前漆器で作った文字盤の周りにはめ込むことになった。司辻さんは「薄さには自信があったが、少しでもゆがみがあれば(精密機器である時計の)部品として使えず調整が大変だった」と振り返る。

 釉薬を塗らずとも硬く焼き締まる土は、焼く前から硬く、ろくろを回す指先を痛めつける。さらに薄いリング状に整形した粘土を焼くとソリが出たり、縮んだりして、精密さを要する時計の部品としては「失敗」だった。3カ月に及ぶ試行錯誤の結果、焼く前のリングの直径は4・02センチにすることで焼いた後に部品として適切な大きさになることや電気釜の6段目で焼くとソリが出ないことなどを発見。さらに白い釉薬を散らし、越前の雪をイメージしたデザインに仕上げた。司辻さんは「越前焼らしい土の味わいを身につけて楽しんでほしい」と話した。

 司辻さんは腕時計作りの経験を生かし、規格の厳しいバングル(腕輪)やピアスなどを手がけるなど、活躍の場を広げている。大瀧さんは「腕時計作りを通して器以外にも活路を見いだせた。窯元の魂やパワーが注がれた商品を持ち歩いてほしい」と語った。【横見知佳】

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