
埼玉県がエスカレーターの利用者は立ち止まって乗ることを努力義務とする条例を制定した。全国でも初とされる条例で10月から施行される。お年寄りら弱者が、上り下りする人とぶつかって転倒してけがをするのを防ぐ狙いがある。一方で、わざわざ条例を設けなければ、弱者に配慮できない社会になったとの指摘もある。
「不安に思う人がいる」と知って 小林和樹・東京都理学療法士協会代議員
私たち東京都理学療法士協会は5年前から「エスカレーターマナーアップ推進」の取り組みを始め、エスカレーターでは歩かないで、立ち止まって乗るよう呼びかけてきた。きっかけは、2016年夏に協会が開催した都民公開講座で、現在、日本パラリンピアンズ協会長を務める大日方邦子さんからいただいた提案だった。大日方さんは「そろそろエスカレーターを歩いて上るような社会は変えていきませんか」と訴えた。
理学療法士は、障害のある方や高齢の方の運動機能の維持・改善を目指すリハビリテーションの専門職で、病気やけがをした人の体を良くして社会生活に戻れるよう支援する仕事だ。しかし、大日方さんの発言で、障害を改善するだけではなく、障害のある人が安全で安心して暮らせる社会を目指すことも我々の使命ではないかと気づかされた。
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