棋界新時代

主観で打つ楽しさ 囲碁 王銘琬九段

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 囲碁の世界は「客観性」が大事である、そう思われることが多いようです。碁を習う良さとして「ものごとを客観的に見られる」ことがうたわれますし、棋士が勝負の世界を志す理由として、主観によって左右されない「白黒がはっきりした世界」がよく挙げられます。

 確かに囲碁の勝負は「ゲーム中にゴールポストが動く」ことはありません。また技術的にも長い歴史の蓄積がある上、局後の検討によって向上が図られやすいゲームです。無数の研究によって築かれた体系に今やAI(人工知能)まで加わり、他の分野と比べても客観性を有するものといえるでしょう。

 では囲碁を楽しむために客観性が大事かと言いますと、むしろ逆ではないでしょうか。囲碁AIはうまく碁を打つことができますが、正解が分からないところでは人間と変わりません。最善手が誰にも分からないので、囲碁では部分の形から作戦まで、おのずと自分なりの見解を持つことになります。同じ局面をどんなに客観的に見ようとしても、結局それぞれの主観によって、みんな違う見方を持ってしまいます。一局を通じて、二つの主観…

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