石炭火力捨てられず原発触れず 菅政権、虚構の温室ガス削減目標
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「ノー、コール(石炭はいらない)!」。4月22日朝、神奈川県横須賀市久里浜にある石炭火力発電所の建設現場前で、十数人の男女が声を張り上げた。東京電力と中部電力の合弁会社「JERA(ジェラ)」が計画し、2023年以降の運転開始を予定する発電所の建設に反対する地元住民らだ。
環境相のお膝元で進む石炭火力建設
この日の夜に開幕する国際会議「気候変動サミット」を前に、住民らはサミットに出席する各国首脳・閣僚の面をかぶって建設中止を訴えた。面の中には、横須賀市を地盤とする小泉進次郎環境相のものもある。温室効果ガス削減の旗振り役である環境相のお膝元で、排出量が多く世界的に批判を浴びている石炭火力の建設が進むことに、反対の声を上げていた同市の大学3年生、松本ひかりさん(20)は「環境相の地元なのに、再生可能エネルギーではないなんて信じられない」と憤った。
その約9時間後の22日夕、菅義偉首相は政府の地球温暖化対策推進本部で高らかに宣言した。「30年度に温室効果ガスを13年度から46%削減することを目指します」。首相は直後に開かれたサミットでこの目標を披露し、国際社会に従来目標(26%減)を大幅に上回る削減を「公約」した。
だが、日本の発電全体に占める石炭火力の割合は30%超にも及び、主要7カ国(G7)で最も多い。11年の東京電力福島第1原発事故後、全国の原発が停止し、石炭や液化天然ガス(LNG)などの火力頼みが続いているからだ。
高い削減目標を掲げるよう主張してきた小泉環境相も、地元で進む石炭火力の建設には歯切れが悪い。4月16日の衆院環境委員会では「環境省は意見は言えるが、(建設を)止める権限はない。(計画継続は)事業者の判断だ。その中で私も最大限努力している」と述べるにとどまった。
削減目標を引き上げながら、石炭火力を捨てきれない日本。菅政権は本気で46%削減をやる気があるのか。エネルギー政策策定の現場を歩くと、削減目標ありきの壮大な帳尻合わせが始まっていた。
首相の「独断」で決まった新…
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