処理水海洋放出に見る政府・東電と市民とのズレ 日大教授の指摘

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福田充・日本大危機管理学部教授=東京都世田谷区の日本大三軒茶屋キャンパスで2021年4月26日、宇田川恵撮影
福田充・日本大危機管理学部教授=東京都世田谷区の日本大三軒茶屋キャンパスで2021年4月26日、宇田川恵撮影

 「アンダーコントロール(状況は制御されている)」と安倍晋三前首相が言い切った東京電力福島第1原発に絡み、国内外から再び激しい批判が上がっている。政府が放射性物質トリチウムを含む処理水を海に流す方針を決めたからだ。危機管理に詳しい日本大危機管理学部の福田充教授は、国民に信頼されていない政府や東電の「ズレ」や「守り」があると指摘する。新型コロナウイルス対策にも通じる、国の指導者の問題も浮かび上がる。【聞き手・宇田川恵・オピニオングループ】

「アンダーコントロール」正しく伝えよ

 ――政府・東電は放出に際し、トリチウムなどの濃度を国の基準未満にすると言っています。基準に基づく海洋放出は実際、さまざまな国でも行われています。それでも国内外の反発は強い。危機管理の観点から見て、政府・東電の問題は何ですか。

 ◆平常時に粛々と基準に従って海洋放出をするなら、他の原発と同じように混乱なく進められるだろう。しかし今回焦点になっているのは福島第1原発だ。チェルノブイリ原発事故に次ぐような大惨事を起こした、あの施設の処理水だ。一般の市民や周辺国の人の目には、大事故の後の非常に高度な汚染水を処理した水だと映っている。だから不安なのだ。平常時と同じやり方で対応してはいけないのに、政府・東電はそれを理解していない。政府・東電と市民や周辺国との間には意識のズレがあり、議論はどこまでいっても平行線のままだ。

 ――政府が「海洋放出の前例はたくさんある」とどんなに説明しても、意識に溝があるのだから理解されるわけがないと?

 ◆その通りだ。私自身、原発事故後に福島を何度も訪れ、「汚染水」をためたタンクが日に日に増えている状況を見ており、海洋放出はやむを得ないのではないか、とも感じる。でも実際に行うには、政府や東電には欠けていることが多い。ポイントは3点だ。

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