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小説「恋ふらむ鳥は」

飛鳥時代の歌人・額田王を主人公に、日本の礎が築かれた変革期の時代を描きます。作・澤田瞳子さん、画・村田涼平さん。

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小説「恋ふらむ鳥は」

/287 澤田瞳子 画 村田涼平

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「わかりました。お力になれるのであれば」

 言葉少なに答えた途端、大友(おおとも)の顔に安堵(あんど)の色が滲(にじ)む。それを待っていたかのように庭先が明るみ、自ら松明(たいまつ)を握りしめた蘇我(そがの)赤兄(あかえ)が、「大友さま、お支度はよろしゅうございますか」と小走りに駆けこんできた。

 こちらは大友とは裏腹に、ひどく古びた短甲に身を包んでいる。一面に鋲(びょう)を打った草摺(くさずり)が、船櫓(ふなろ)に似た音をしきりに立てていた。

「安河に放った窺見(うかみ)(密偵)が戻りました。敵は夜にもかかわらず赤々と篝火(かがりび)を立て、馬に飼い葉を食(は)ませておったとやら。陽(ひ)の高い時刻に攻め入るならば、夜通しの支度は要りますまい。大友さま、いよいよですぞ」

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