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緊急事態宣言の延長 中途半端で戦略見えない

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緊急事態宣言の延長などについて記者会見する菅義偉首相=首相官邸で2021年5月7日午後7時4分、竹内幹撮影 拡大
緊急事態宣言の延長などについて記者会見する菅義偉首相=首相官邸で2021年5月7日午後7時4分、竹内幹撮影

 「短期集中」の対策は失敗だった。政府は、その事実を重く受け止めて、今後に生かさなければならない。

 新型コロナウイルス対策のため東京、大阪など4都府県に発令中の緊急事態宣言の延長が決まった。11日の期限を31日までとした。

 全国の新規感染者や重症者が増える傾向が続き、関西の医療提供体制は危機的な状況だ。首都圏でも、医療逼迫(ひっぱく)への懸念が高まっている。

 4月25日からの宣言で感染者を大幅に抑え込むことはできなかった。延長はやむを得ないだろう。

 解除できなかったのは、菅義偉首相が「短期集中」にこだわったからだ。専門家は「少なくとも3週間は必要」と指摘していたが、それに耳を傾けることなく17日間とした。

 一連の対策で、東京や大阪では今年1月の2度目の緊急事態宣言時よりも人出は減った。しかし、従来株に比べ感染力の強い変異株が広がり、抑制が難しくなっている。政府の認識は甘かったと言わざるを得ない。

 「人の移動を減らすことで感染拡大を防ぐ」という政府のメッセージも十分に伝わらなかった。大型連休中に、宣言が出ていない地域へ出かける人も目立った。

 今回の延長も問題が多い。

 政府は、大型商業施設への休業要請やイベントの観客制限などを緩和する方針だというが、人の移動が増える可能性がある。当初の狙いに反するちぐはぐな対応だ。

 31日を新たな期限とした根拠も示されていない。どんな条件を満たせば解除されるのかも、具体的な説明はないままだ。

 流行から1年以上たつにもかかわらず、医療体制の強化や休業支援の拡充は進んでいない。国民には「政府は協力を求めるだけだ」との不満が募っている。

 開幕が近づく東京オリンピック・パラリンピックが、思い切った対策を政府にためらわせているというのであれば本末転倒だ。感染を抑えることが、五輪開催の大前提である。

 根拠や目的がはっきりしない中途半端な対策では、国民の信頼を得ることは難しい。命と生活を守る戦略を明確に示すことが、政府の責任だ。

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