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部活動での事故死や学校内で起きた転落死などの教訓を生かし、再発を防ぐ制度が機能していない実態が明らかになった。
学校での事故が後を絶たないことを受けて、国は2016年に対応指針を定めた。
死亡事故が起きた場合、教育委員会や学校側は第三者委員会を設置して詳しく調査し、結果を国に報告する。国は原因や課題を整理して全国に周知し、対策に反映させる。
だが、国が過去5年間に把握した死亡事故110件のうち、調査結果の報告を受けたのは1割に満たなかった。
教委や学校の側に事故原因を究明しようという姿勢が見られず、遺族の不信感を招くケースが少なくない。
神奈川県平塚市の小学校児童が学校前での図工の授業中、車にひかれて死亡した14年の事故では、学校側が遺族に不誠実な対応を続け、訴訟を起こされた。
指針ができた後も、学校側の対応に大きな改善は見られない。
災害共済給付制度の対象となった事故の中には、校舎のベランダなどから誤って転落死したケースが毎年のように含まれる。だが、国に詳しい報告はされていない。
これでは、制度が骨抜きになっていると言わざるを得ない。指針自体に抜け穴があることが大きな原因だ。
調査を実施するかどうかの最終的な決定権は教委などにある。さらに、調査すべきケースが「教育活動自体に事故の要因があると考えられる場合」などとしか記されていないため、調査しない口実にされている可能性がある。
背景には、教委や学校の責任が問われかねない第三者委の調査を避けたいという心理もあるのではないか。そうした体質はいじめ問題でも指摘されてきた。
ただし、いじめ対策では、自殺などの重大事態を招いた疑いがあれば、第三者による調査の実施が義務付けられている。
国は死亡事故についても、詳しい調査が求められるケースを具体的に明示し、調査と報告を義務付けるべきだ。
事故を防ぎ、子どもの命を守るための制度を再構築しなければならない。