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新型コロナウイルス

新型コロナウイルスのニュース、国内での感染状況を報告します。

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緊急事態宣言下でも減らない人の流れ 人のさがとの根深い関係

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東京大大学院の奥原剛・准教授=東京都文京区で2021年4月27日午前11時、田中泰義撮影
東京大大学院の奥原剛・准教授=東京都文京区で2021年4月27日午前11時、田中泰義撮影

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、3回目の緊急事態宣言が発令された。しかし、政府や自治体は不要不急の外出自粛やテレワークを呼びかけているものの、新型コロナ慣れのためか、人の流れは減っていない。どうすれば人を動かすことができるのか。感染対策、生活習慣、検診など行動変容のためのヘルスコミュニケーションを研究する奥原剛・東京大大学院医学系研究科准教授(46)に秘訣(ひけつ)を聞いた。【聞き手・田中泰義】

専門家が陥る「知の呪縛」

 ――政府や自治体、さらに報道も感染対策を呼びかけていますが、効果は薄いようです。

 ◆政府や専門家の発信の分かりにくさが一因だと思います。私は「専門家の知の呪縛」と呼んでいますが、政府や専門家には「知識を与えれば行動してくれるはず」という誤った思い込みがあります。市民がひと目で直観的に理解できる情報発信が必要です。例えば、数字は情報の説得力を高めますが、「何%の確率でこうなる」「何割減らす」といった確率や相対頻度の数字を人は直観的に理解できません。小学生が授業で足し算や引き算から、掛け算や割り算になると急に難しく感じるのと同じです。「80%がワクチン接種を受けた」から「5人のうち4人が接種を受けた」と身近な数字に置き換えて伝えるだけで、直観的に理解しやすくなります。また、「5人のうち4人が接種を受けているなら自分も受けよう」と思います。「X万人が試した」「Y万本突破」などという広告をよく目にしますが、「他の人たちと同じ行動をとりたい」という人間の心理を利用した戦略です。

 また、情報過多という時代背景もあります。英紙「テレグラフ」の調査によると、私たちが1日にさらされる情報量は1986年からの約20年間で4倍以上の174部相当にまで増えたそうです。毎日、机の上に新聞174部が置いてあることを想像してください。これだけ情報量が増えると、人の注意は散漫になり、あれこれ注意し理解をするゆとりはありません。新型コロナに関する情報が各種メディアから大量に発信されています。他の情報に競り勝ち人々の注意を引こうと、刺激的な内容に走るメディアもあります。テレビのワイドショーのおおげさな情報発信のやり方は、受け手の思考を停止させやすい環境を作り出しています。

 情報が多すぎて思考停止してしまうケースは身近にあります。最近、家電もスマートフォンも高機能になりました。店員さんはお客さんに対し、「こんな機能、あんな機能があります。こうやって操作します」と丁寧に説明してくれます。しかし、そのような商品になじみのない人には、たちまち理解が容量オーバーになります。スマホに慣れている人には平気でも、門外漢は「分かった、分かった、もういいわ」と店を出ていってしまうでしょう。

99%が直観で行動

 ――80歳になった私の親がまさにそうです。

 ◆同じことが新型コロナの情報でも起きています。専門家は知識が豊富で、正確性を重視するため、発信する内容が情報過多になりがちです。しかし、…

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