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「高齢者が置き去りに」町医者たちが見た大阪、兵庫のコロナ危機

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ウェブ上で意見を交わす(左上から時計回りに)高本英司・蒲生厚生診療所医師、安田雅章・安田クリニック院長、大島民旗・西淀病院副院長、西山裕康・西山クリニック院長=ウェブ会議システム「Zoom」から 拡大
ウェブ上で意見を交わす(左上から時計回りに)高本英司・蒲生厚生診療所医師、安田雅章・安田クリニック院長、大島民旗・西淀病院副院長、西山裕康・西山クリニック院長=ウェブ会議システム「Zoom」から

 患者にとって一番身近で頼れる存在が、地元の開業医だ。医療の逼迫(ひっぱく)が深刻化する大阪府と兵庫県の開業医ら医師4人を招き、ウェブ会議システム「Zoom」による座談会で現状を語ってもらった。新型コロナウイルスの感染が再拡大する中、「町医者」たちが見た実態とは――。

 ――新型コロナの特徴は。

 西山クリニック(兵庫県明石市)の西山裕康院長(64) これまでにもウイルス性肝炎やHIV(ヒト免疫不全ウイルス)など危険性の高い感染症はあったが、これほど診療所の医師が不安になった状況はなかった。当初は情報が十分になく、感染したら診療所は閉鎖し、自分も入院して死んでしまうのではないかと恐れていた。

 安田クリニック(大阪府岸和田市)の安田雅章院長(56) 「診療・検査医療機関」に指定され、新型コロナの発熱患者を診察しているが、コロナかどうか微妙な風邪や発熱の患者も送ってくるクリニックがある。風邪を診ない開業医が増えたため、それを引き受けるクリニックに集中しているように感じる。

変異株で若者の受診増え

 ――変異株の影響は。

 安田氏 2021年4月に入って陽性になる患者が増えている。20年6月以降、計354人を検査し、26人が陽性だった。このうち、21年4月は21日午前までに88人検査して11人が陽性になり、高校生もいた。最近は若い人も検査を受ける人が増え、中には1歳の幼児も。校医をしている中学校でも感染者が出て臨時休校になった。

 西山氏 同じく若者が多いと感じる。昨年までは発熱ブースで診察した患者のうち、陽性はまれだったが、最近では珍しくない。兵庫県でも入院治療が困難な状況になりつつある。

 西淀病院(大阪市西淀川区)の大島民旗副院長(56) 発熱外来は午前中に翌日の予約が埋まる。次から次に患者が来る。

 ――重症化リスクが高い高齢者の状況は。

 蒲生厚生診療所(大阪市城東区)の高本英司医師(73) うちは小児科がないので高齢の患者が多い。調べると、65歳以上の患者381人のうち118人が1人暮らしだった。薬を出したり、検査の検体を受け取ったりすることが家族経由でできず、何かあったときの対処も難しい。また、(コロナに感染していない)ある80代の女性は、不要不急だからといって膝の手術ができず、足が痛いから家にとどまっている。置き去りにされた高齢者がいる。

 西山氏 高齢者は、自粛している人はずっと自粛している。1人暮らしでがんばっている人もいる。不要不急の外出や多人数での飲食の抑制を中心に、人流をコントロールするのが大事ではないか。

 ――ワクチン接種の課題は。

 安田氏 ワクチンを打つと副反応で発熱することがある。そうした人がクリニックに来たり、問い合わせをしたりするとパンクしてしまうと懸念している。

 西山氏 ワクチンの供給がスムーズにいかないと、全ての希望者に打ち終わるのは冬になるのではないか。「希釈後6時間以内に使用」や「6人ずつまとめる」といった接種スケジュールは調整しづらく、政府が言うように「一滴も無駄にするな」というのは難しい。

現場「緊張の糸切れないように」

 ――2回目の緊急事態宣言の解除(3月1日)のタイミングは。

 高本氏 前倒しで解除したが、早すぎた。もう少し見極める必要があった。吉村洋文・大阪府知事のパフォーマンスだ。

 西山氏 解除のタイミングの判断は難しい。ただ、大阪府、兵庫県の両知事の伝え方が下手で、若い人の心に届いていない。それに(十分な休業補償など)お金を出さないと、人は協力しにくい。

 大島氏 (吉村知事は宣言期間中に解除の要請を議論するなど)解除前から「もう大丈夫」とミスリードしてしまった。解除後も本来なら会食を控える時に、「マスク会食」などで誤ったメッセージを伝えてしまった。

 ――現状は医療崩壊か。

 高本氏 医療は全体がうまく回ってこそだと思う。社会復帰するための手術や診療ができない状態は医療崩壊と考えればよい。

 大島氏 うちの病院では退職者はいないが、スタッフのストレス(の大きさ)は相当だ。コロナ病床は1床しか確保していないが、複数のコロナ患者を引き受けている。定期的に担当を変えたり、系列の診療所の看護師の支援を得たりして、緊張の糸が切れないようにしている。とにかく感染者を減らさなければ、この危機は乗り越えられない。【構成・近藤諭】

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