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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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近代科学の父といわれるガリレオは天体望遠鏡ばかりでなく…

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 近代科学の父といわれるガリレオは天体望遠鏡ばかりでなく、温度計や比例コンパス、偽金(にせがね)発見器などの発明家でもあった。その一つに馬を使った灌漑(かんがい)用ポンプがあり、ベネチアの元首に特許の請願をしている▲請願書でガリレオはこの発明には多額の費用と大変な労力を注いだと訴え、むこう40年間にわたる特許権を認めるよう求めている。「そうすれば、私は社会の福祉のためにもっと新たな発明に力を注ぎ、閣下への忠勤にはげみます」▲世界初の特許法を施行していたベネチアは期間を20年に限り、この請願を認めたという。ガリレオも強調した特許権など知的財産権保護の社会的意義だが、今、パンデミックという非常事態でのその「一時放棄」が論争を呼んでいる▲米政権は、インドなどが世界貿易機関(WTO)で求めた新型コロナワクチンの特許権の一時放棄を支持すると表明した。先進国のワクチン独占への批判に応えてだが、これには製薬企業ばかりかドイツなど欧州諸国も反発を示した▲途上国に早く十分なワクチンを届けるのは、人道的課題であるばかりかパンデミック収束に必須(ひっす)である。だが特許権放棄となれば、今後の創薬への投資は萎縮しよう。特許を開放したところで、すぐに製造できるわけでもないという▲欧州ではワクチン供給不足は米英の自国優先政策のせいだとの反発があり、また全会一致の必要なWTOの合意も容易でない。ここは世界的な供給増を早く実現するのに最適な策を冷静に探ってはどうか。

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