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10年で物価2%未達 頰かむりするのは無責任

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 「異次元緩和」を10年間続けても、2%の物価上昇目標は達成できない。日銀自身がそう認めた。

 最新の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、2023年度の物価上昇率を1%とする見通しを示した。

 黒田東彦総裁の任期は23年4月までだ。任期中の目標達成を事実上、あきらめた格好だ。

 黒田氏は、就任直後の13年4月に2%目標を「2年程度で達成する」と打ち出し、市場に大量のお金を流し込む異次元緩和に乗り出した。

 開始当初こそ物価は上昇傾向を示したものの、14年4月の消費税増税や原油価格下落の影響もあり、失速した。その後も、マイナス金利の導入など緩和策を拡大したが、物価は低迷したままだ。

 目標の達成時期は、6度先送りされた。18年4月以降は、時期すら示せなくなった。

 23年度の物価上昇率を1%と見込むのは、新型コロナウイルス感染拡大による景気落ち込みの影響が残るためという。

 その一方で、21~22年度の経済成長率の見通しは引き上げた。景気が回復しても物価が上がらないなら、黒田氏による緩和策の限界を示しているといえる。同じく成長率の上昇を見込む米国や欧州諸国は、物価も回復に転じている。

 日銀は16年に行った政策の総括的検証で、目標が達成できていないのは、デフレの長期化で「物価は上がらないだろう」という考えが人々に染みついているためだと分析した。

 黒田氏は、先月の記者会見でもこの説明を繰り返した。自らの退任後も、日銀が今の緩和策を続ければ「目標は達成できる」と強調した。

 目標にこだわるのは、主要国の中央銀行が2%を目指していることが背景にある。だが、日本経済の実情に照らして妥当な水準かどうかは疑わしい。

 物価上昇の効果が不確かな一方で、市場の健全な機能を損なうといった大規模緩和策の副作用は蓄積している。

 行き詰まりに頰かむりしたまま今の政策を後継者に引き継ぐのは、あまりに無責任だ。黒田氏は任期中に、異次元緩和について抜本的な検証を行うべきだ。

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