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東北公益文科大野球部 センバツ4強の名伯楽 原石を磨く

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マウンドで目をつぶって気持ちを整える東北公益文科大時代の赤上優人投手(左)と横田謙人監督=同大提供 拡大
マウンドで目をつぶって気持ちを整える東北公益文科大時代の赤上優人投手(左)と横田謙人監督=同大提供

 昨年のプロ野球ドラフト会議で西武から育成1位指名を受けた赤上優人投手(22)の母校が、東北公益文科大(山形県酒田市)だ。同校から初のプロ野球選手となったが、育成に手腕を発揮したのが、山形・羽黒高監督時代に同校をセンバツで同県初の4強入りに導いた横田謙人監督(51)。神奈川・湘南生まれ、米カリフォルニア州育ちながら、山形で指導者の道を歩む名伯楽の選手育成の秘訣(ひけつ)とは――。

 「いい種は、水を与えてあげれば、花が咲きます」。2013年から指揮を執る横田監督は、そんな表現で育成の「肝」を語り始めた。「基本的なポイントさえ間違っていなければ、フォームや構えをいじる必要はない。赤上にしても、きれいな投げ方をしていたので、フォームには触りませんでした」。長所はそのまま伸ばし、メンタルとフィジカルといった根っこの部分を強化していった。

 赤上は秋田・角館高出身。1年夏の甲子園ではメンバー入りしたが、出場機会はなかった。その後も同学年のエース小木田敦也(現TDK)の陰に隠れていた「原石」を磨いたのが横田監督だった。

 大学1年の秋に遊撃手から投手にコンバート。本格的なウエートトレーニングや坂道ダッシュで肉体改造に取り組んでもらう一方で、特に力を入れたのがメンタルトレーニングだ。横田監督は米国で大リーグを目指していた高校、大学時代に最新のメンタルトレーニング理論に触れた。「例えばピンチの時に目をつぶって深呼吸をすると、心拍数が落ち着いてベストパフォーマンスを発揮できるようになる。赤上もタイムアウトの一瞬で、目をつぶって気持ちをリセットできるようになった」。やがて球速は最速153キロを計測。精神的にも成長し、3年秋のリーグ戦では優勝に貢献して、最優秀選手に選出された。

 赤上がじっくり自分と向き合えたのは、個人練習に時間を割く横田監督の指導方針も大きかった。全体練習の時間が少ない米国時代の自身の経験もあったが、山形ならではの事情もあるのだという。

 横田監督は米国から帰国後、社会人野球のローソンを経て、高校野球の強化に力を入れていた山形県のスポーツ指導員になった。その後、羽黒高の監督に就任したが、「グラウンドは冬には雪が2メートル近く積もる豪雪地帯にあり、外であまり練習できない分、ボールを使った練習と同じぐらいウエートトレーニングに時間をかけた。それでパワーがついて、1・5キロある金属のマスコットバットを使った打撃練習もできるようになった」。パワー野球は甲子園を席巻。05年センバツでのベスト4という結果につながった。雪国のハンディを土台作りの好機と捉えた逆転の発想は、今も生きている。

 「常に新しい知識を取り入れて、選手とハードワークをしていきたい」。次の目標は全国大会である全日本大学選手権と明治神宮大会への出場。今後も選手育成に必要な理論を貪欲に吸収し、一人一人にフィットする最適な選択肢を提示していく。【高橋秀明】

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