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私の体はテレビでできている

早稲田大演劇博物館館長を務める岡室美奈子教授が、過去や現在の、ひょっとしたら未来のドラマの世界も旅しながら、折々のことを語ります。

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私の体はテレビでできている

「流行感冒」が訴える文化芸術

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 <教授・岡室美奈子の私の体はテレビでできている>

 4月10日にNHK・BSプレミアムで、志賀直哉の短編小説を原作とするドラマ「流行感冒」が放送された。

 時は大正7(1918)年。流行感冒(スペイン風邪)が流行し始め、最初の子どもを病気で亡くした小説家の「私」(本木雅弘)は幼い娘の左枝子のことを過剰に心配し、すべてに疑心暗鬼になる。そんな中、旅役者の一座が村にやってくる。「私」は女中の石(古川琴音)ときみ(松田るか)に観劇を厳しく禁じるが、大の芝居好きの石は我慢できずに行ってしまう。「行かなかった」とうそをついた石に「私」は暇を出そうとするが、思いとどまる。やがて当の「私」が植木屋から感染してしまい、妻(安藤サクラ)や左枝子にうつしてしまう。すると石は身を粉にして健気(けなげ)に働き、「私」は石への信頼を取り戻す。

 脚本を担当した長田育恵は、現在のコロナ禍の状況を巧みに取り入れている。マスクをしていない者を警察が取り締まったり、居酒屋が閉店に追い込まれたりもする。「私」は村芝居に集まる観衆の「密」な状態を想像し、悪夢にうなされる。が、舞台劇の劇作家でもある長田が最も力を込めて描いたのは、芝居小屋で女中の石は感染せず、逆に過剰に防御していた「私」が、感染が下火になった途端に油断して感染してしまうという展開だっ…

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