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高齢者のワクチン接種 かけ声だけでは混乱招く

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 高齢者への新型コロナウイルスワクチンの接種がようやく進み始めた。菅義偉首相は1日100万回の接種をめざし、65歳以上の高齢者への2回接種を7月末までに終わらせると宣言している。

 迅速な接種は喫緊の課題だ。そのためには、接種や副反応に対応する医療従事者の確保、スムーズな予約の実現などの体制を整える必要がある。

 政府はトップダウンで接種期限を押しつけるのではなく、自治体の事情を酌みつつ、早急に効果的な支援策を講じるべきだ。

 日本の感染拡大抑止策は決め手に欠け、ワクチン接種も諸外国に比べ周回遅れだ。

 10日までに1回でも接種を受けた高齢者は1%程度にとどまる。医療従事者も2回の接種を終えた人は対象の4分の1に過ぎない。

 全国知事会が高齢者接種の課題を聞いたところ、すべての都道府県が「医療従事者の不足」を挙げた。「通常診療への支障」「接種会場不足」「医療従事者の接種未完了」を指摘する自治体も多い。

 厚生労働省は歯科医師による接種も認めた。離職中の看護師にも協力を求めている。だが、それで十分な人員を確保できるかは見通せない。

 菅首相が東京都と大阪府への設置を防衛省に指示した大規模接種センターも場当たり的で、問題が多い。

 1日最大1万人に接種するというが、多数の高齢者が集まれば混乱は避けられない。会場内や移動中の感染リスクも高まるだろう。自治体の接種との役割分担もはっきりしない。

 予約をめぐっても、各地でトラブルが起きている。電話もインターネットもつながりにくく、回線がパンクする自治体も出ている。

 とりわけ、ネットに不慣れな高齢者が自力で予約することには無理がある。ワクチンを待ち望む心情をまったく顧みないやり方だ。

 菅政権にはワクチン接種で五輪開催への環境を整えたいという思惑もあるのだろう。だが、高齢者の接種が進んでも感染拡大のリスクがなくなるわけではない。

 重症者や死亡者を減らすため、政府はかけ声だけでなく、着実で迅速な接種の体制を構築しなくてはならない。

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