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入管・難民問題

国外退去処分になった外国人の入国管理施設での扱いが注目を集めています。難⺠に厳しいと言われる日本。人権は守られている︖

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「ガラ」と見下す風潮 元職員が明かす入管の人権意識

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入管施設の新型コロナウイルス対策マニュアルを前に、取材に応じる入管収容施設の元職員=東京都千代田区で2021年5月5日、小川昌宏撮影
入管施設の新型コロナウイルス対策マニュアルを前に、取材に応じる入管収容施設の元職員=東京都千代田区で2021年5月5日、小川昌宏撮影

 入管収容施設の「密室」で被収容者はどう扱われるのか。東日本の入管収容施設で働いていた元職員が、現場を改善してほしいと初めてメディアの取材に応じ、一部職員は外国人の被収容者を「ガラ」と呼んで「見下しているように感じた」と証言した。また、収容されている人が体調不良を訴えても詐病を疑う風潮もあったといい、「職員は医療の素人。専門スタッフが常駐していれば名古屋入管での事件も起きなかったのではないか」と医療提供体制の充実を訴えている。【上東麻子、金志尚/デジタル報道センター】

 毎日新聞が4月29日に、「外国人は悪いことをするかもしれない、危険な人になり得るかもしれないという意識がありました」などと、その証言を報じた元入国審査官の木下洋一さん(56)も、審査対象の外国人について職場で「ガラ受け(身柄引き受け)」などと話していたと明かしている。

 名古屋出入国在留管理局の収容施設では3月6日にスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が死亡している。これまでも収容中の外国人が死亡する例が相次いでおり、入管法改正を巡る国会審議でも施設内での処遇が問題になっている。

収容施設での死亡17件

 出入国在留管理庁(入管庁)警備課によると、収容中の外国人が施設で死亡した例は、2007年以降17件起きている。内訳は病死10件、自殺5件、死因不詳2件。施設別では東日本入国管理センター(茨城県牛久市)と東京入管(東京都)がそれぞれ6件、名古屋入管(名古屋市)2件、大村入国管理センター(長崎県大村市)、福岡入管(福岡市)、西日本入国管理センター(現在は廃止)が各1件となっている。

入管も「あってはいけない」

 元職員の男性は待ち合わせ場所にジャンパー姿で現れた。入管収容施設で働いていたが、被収容者に対する処遇や医療提供体制を「おかしい」と感じていたという。少し前まで働いていたが、身元を特定される恐れがあるため、詳細な勤務期間は明らかにできない。外国人の人権問題を長年扱っている支援者に自ら連絡し、少しでも現場の改善につながればと記者の取材に応じた。

 元職員が収容施設で働き始めて最初に驚いたのは、先輩職員たちが収容されている外国人のことを「ガラ」と呼んでいたことだった。「ガラが、ガラが、と言っているので何のことかと思ったら、被収容者のことだったんです。同僚に意味を尋ねると、『身柄のガラのことだろう』と言われました」と語った。

 「身柄」という言葉は、刑事手続きの中で容疑者を逮捕し法的に身体を拘束する場合に使われることがある。

 入管法では、オーバーステイなどで外国人を検挙した警察はその身体を入管に引き渡すよう定めている。こうした手続きを「身柄引き受け」といい、元入国審査官の木下さんによると、略語として、「ガラ受け」と呼んでいたという。入管法64条にも「身柄の引渡」という見出しがある。しかし、収容した外国人を「ガラ」と呼ぶのはどうだろうか。

 入管庁警備課に事実関係を問い合わせると、「そんな呼び方はあってはいけないし、していない」とコメントした。

 刑事事件に詳しく、「刑事弁護人のための隠語・俗語・実務用語辞典」の著書もある下村忠利弁護士は、「身柄」という言葉について、「逮捕されて法的に身体拘束された途端、生きた人間が『物体』扱いされてしまう。同じ人…

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