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養護施設を出た若者 自立支える体制の構築を

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 虐待などで親元を離れ、児童養護施設や里親家庭で育った若者の多くが、社会に出てから生活の苦しさや不安に直面している。厚生労働省による初の全国調査で明らかになった。

 こうした若者は「社会的養護経験者」と呼ばれている。施設などでの公的な保護や養育は原則18歳までとなっている。社会生活に必要なスキルが不十分なまま独り立ちを迫られているのが実情だ。

 調査でまず浮かんだのが、家計の苦しさだ。回答した約3000人のうち、毎月の収支が「赤字」という人は23%に上った。過去1年間に病院を受診できなかったことがある人は2割に達し、うち7割弱が経済的な理由だった。

 背景には、学費がかさむ大学への進学率が低く、就職しても十分な所得を得にくい事情がある。

 子どもがいる人では、育児の不安を訴えるケースが多かった。施設で暮らした場合、親子関係の築き方に戸惑う例もあるという。

 こうした若者は、施設などを離れた後も親からの援助は乏しい。育った環境によって不利な立場が続くのは理不尽だ。子ども時代の保護だけではなく、社会に出た後の自立を支えることも国の責務ではないか。

 厚労省は2017年度から、日々の暮らしの相談などに応じる自立支援事業を始めているが、十分に行き届いていない。

 経済的な自立に向けて、奨学金の活用などによる進学の後押しや、就労支援を強化すべきだ。

 子育て支援では、妊娠中から公的な相談機関を活用できる仕組みを整えてほしい。

 虐待を受けた経験などでメンタルケアが必要な人もいる。サポートの継続が欠かせない。

 窓口となる自治体の体制も拡充すべきだ。自立支援事業を担う自治体のうち3割強は、支援計画などをまとめるコーディネーターを配置していない。国は自治体への支援やNPOとの連携を強化し、地域差の解消を進めなければならない。

 調査は約2万人を対象としたが連絡できなかった人は6割強に上り、全体像は把握できていない。

 国はさらに実態把握に努め、きめ細かな支援策を構築しなければならない。

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