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竜宮城があるのなら…

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明け方に沖へ向かって泳ぐアカウミガメの赤ちゃん。日中に動き出すのは珍しい=屋久島で写真家の高久至さん撮影
明け方に沖へ向かって泳ぐアカウミガメの赤ちゃん。日中に動き出すのは珍しい=屋久島で写真家の高久至さん撮影

 「ブフォー」。真夜中の潮騒にまぎれてときおり苦しそうな呼吸音が聞こえてきた。月明かりに照らされた砂浜を、黒い岩のようなものがじわじわと近づいてくる。産卵のためにやってきたアカウミガメのメスである。重たい体を引きずるように少し進んでは、深い呼吸をしてまた少し進む。

 海の中にすむアカウミガメにとって陸上に上がることはそれだけでも命懸けだ。ライトをつけたり、目の前をウロウロしたりするとアカウミガメは嫌がって海へ帰ってしまうこともある。私は砂浜の岩になりきり、様子を静かに眺めていた。

 私の住んでいるここ屋久島は、北半球で一番のアカウミガメの産卵上陸地として知られている。多い年には1000頭以上のメスが産卵上陸する。産卵期はおよそ5月から8月、ふ化は7月中旬から9月上旬までだ。この世のどこかに竜宮城があるのなら、それは屋久島の海の中かもしれない。

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