特集

今週の本棚

「面白い!読ませる!」と好評の読書欄。魅力ある評者が次々と登場し、独自に選んだ本をたっぷりの分量で紹介。

特集一覧

今週の本棚

渡邊十絲子・評 『誰がために医師はいる クスリとヒトの現代論』=松本俊彦・著

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷
『誰がために医師はいる クスリとヒトの現代論』
『誰がために医師はいる クスリとヒトの現代論』

 (みすず書房・2860円)

道徳ではなく、医学的知識でこそ説得

 病院で初対面の医師に会うときは緊張する。よほど構えてかからないと、自分の言いたいことが医師に届かない。以前、派手な薬疹を診てもらったのに「薬疹はそんな場所には出ない。明らかにダニのせい」と誤診され、危なかった経験がある。しかし、転居した先で行くようになったクリニックでは、何十分かかってもていねいに患者の言い分を引き出そうとしてくれるので驚いた。ごく普通のかかりつけクリニックだが、その医師の専門は精神科だった。

 精神科医は、ほかの科の医師とは考え方が違うのかもしれない。この本の著者は、医学部の先輩にこんな格言を聞かされたそうだ。<内科医はなんでも知っているが何もできない。外科医はなんでもやるが何も知らない。精神科医は何も知らないし、何もできない>。当初は反発をおぼえたが、やがてその言葉を受け入れ<医者でありながら医者とカウントされない>精神科医として生きていく。このあたりの筆致は多少自虐的に見えるけれど…

この記事は有料記事です。

残り891文字(全文1329文字)

あわせて読みたい

この記事の特集・連載
すべて見る

注目の特集