地銀再編、本当に必要か? 規模拡大では描けない大事なビジョン

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経営統合に向けた協議入りを決めた青森銀行の成田晋頭取(左)とみちのく銀行の藤沢貴之頭取=青森市堤町で2021年5月14日午後6時36分、江沢雄志撮影
経営統合に向けた協議入りを決めた青森銀行の成田晋頭取(左)とみちのく銀行の藤沢貴之頭取=青森市堤町で2021年5月14日午後6時36分、江沢雄志撮影

 ずっと違和感を感じてきた。地方銀行の再編を巡る議論についてだ。「地銀は過当競争で、再編が避けられない」と常識のように叫ばれ続けているが、合併すれば問題は解決するのだろうか。規模拡大以外に、本当に生き残る道はないのか。そんなモヤモヤを解消したくて、地域金融機関の事情に詳しいプロたちに聞いてみた。地銀合併、本当に必要なんですか――?【安藤大介/経済部】

首相も「数が多過ぎる」

 地銀再編を巡る議論が再び注目されるようになったのは、昨年9月の菅義偉首相の発言がきっかけだ。当時、官房長官だった菅氏は、自民党総裁選を巡る記者会見で「地方の銀行は数が多すぎる」と発言。翌日の官房長官会見では「再編も一つの選択肢になる」と踏み込んだ。

 この発言に促されたのか、金融当局も動いた。金融庁は昨年11月、合併や統合をする地銀などにシステムの統合費用への補助として最大30億円を支払う制度を示した。日銀も同月、経営統合や経費節減に取り組む地銀などに対し、日銀に預けた当座預金に年0.1%の上乗せ金利を付ける制度を発表した。

 人口減少が進み、地方経済は縮小している。集めた預金を貸し出して稼ぐ従来型のビジネスモデルは、長引く超低金利環境で利ざやが大幅に縮小し、行き詰まっている。だからこそ合併してコスト削減を進めたり、過度の競争を回避したりして生き残りを図ろう、というわけだが、果たしてそれが解決策となり得るのだろうか。

 こうした疑問をぶつけるため最初に訪ねたのが、城南信用金庫の元理事長、吉原毅さん(66)だ。同信金は、預金残高が信金業界2位の約3.9兆円(2021年3月末)で、中堅規模の地銀に相当する。17年には認知症の人が介護施設に入る時などに面倒な手続きなしでお金を引き出せる全国初の専用口座を取り扱うなど、生き馬の目を抜く首都圏でユニークなアイデアを武器に安定した業績を上げている。

 信金と地銀では業態は違うとはいえ、同じ地域金融機関としてしのぎを削る者同士。ヒントがあるのではないか。尋ねると意外な答えが返ってきた。

 「そもそも多くの地銀はビジョンが全く間違っています。合併しても結局、行き詰まることになるでしょう」

「かぼちゃの馬車」の教訓

 一体どういうことなのか。吉原さんは地銀再編とは直接関係がなさそうな自身の経験談を語り始めた。11年の東京電力福島第1原発事故後に、城南信金理事長としてどう行動したかということだった。

 吉原さんは、原発事故が起きて初めて、原発に無関心だった自分たちにも責任の一端があ…

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