無症状の親子感染「まるで異次元世界」 隔離、学校…生活が一変

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3度目の緊急事態宣言適用後、初の平日の朝にマスク姿で通勤する大勢の人たち。奥は新橋駅前のSL広場=東京都港区で2021年4月26日午前8時10分、竹内紀臣撮影
3度目の緊急事態宣言適用後、初の平日の朝にマスク姿で通勤する大勢の人たち。奥は新橋駅前のSL広場=東京都港区で2021年4月26日午前8時10分、竹内紀臣撮影

 第4波で注目されるのは変異株、無症状感染の拡大だ。「異次元の世界に迷い込んだよう」。親子で感染したある女性は家庭内隔離、療養施設での生活を困惑の表情で振り返る。無症状でも、生活は大きく一変した。本人だけでなく、家族、周囲への影響は甚大だ。20代が目立つ療養施設では「若者を介してコロナがまん延しているのではないか」と思ったという。急増する無症状感染者の体験とは――。【生野由佳/デジタル報道センター】

金曜深夜に陽性連絡、物置で隔離

 東京23区に住む会社員、山本さつきさん(53)=仮名=は今春、小学6年の長男(11)と一緒に屋内イベントに参加するため、主催者が手配した民間PCR検査を受けた。その日の夜遅く、さつきさんだけが、陽性だと電話連絡があった。長男は陰性だった。「まさに青天のへきれきです。何の症状もなく、感染経路は分かりません。会社は在宅勤務が進み、電車通勤は週2日程度。飲み会もなくマスクは常時、着けています」

 民間検査で陽性となっても、正式な診断にはならない。さつきさんが陽性連絡を受けたのは金曜深夜で、地元保健所は連絡が取れなかった。唯一、電話がつながったのが東京都発熱相談センターだった。ところが、自力で医療機関を予約して検査を受けるように言われるだけ。途方に暮れた。

 「近隣のかかりつけ医は週末、休診です。無症状で救急車は呼べないし、陽性と分かっていては、遠方の医療機関に行くために交通機関は使えないでしょう」。悩んだ末に勤務先の産業医に相談し、月曜日まで家庭内で隔離生活を送ることにした。

 さつきさんは、会社員の夫(54)、高校2年の長女ゆいさん(16)=仮名、長男との4人暮らしだ。「自宅で部屋を分けろと言われても、そもそも私には個室がありません。都市部では難しいように思うのですが皆さん、自分の部屋はあるのでしょうか」。まずは自身の隔離に困った。

 自宅は1階にリビングとトイレや風呂、2階に3部屋が並ぶ3LDKの一軒家だ。長男と一緒に寝ている部屋から、普段使っていない6畳の物置部屋に布団一式をひっぱり込み、荷物を寄せたり、積み上げたりして空きスペースを作った。

 そうして寝る場所は確保できたが、コロナ感染という現実に気持ちの整理は付かなかった。

 体調には異変はなくても、不安が波のようにおしよせてくる。「打てる対策が何もないのです。ただただ、時間の経過を待つしかない。明日には体調が急変し、高熱が出てしまうのではないか。意識がもうろうとしてきたらどうしようかと体調悪化を想像し、朝まで一睡もできませんでした」

 夜勤だった夫が早朝、消毒液やマスクなどを買い足して帰ってきた。夫にとっても初めての体験だ。家庭内感染を防ごうと、家族による涙ぐましい試行錯誤が始まる。

 物置部屋の前に、ビニールシートをすだれのようにかける。家族全員が家の中でもマスクを着用。トイレのドアは開けっぱなしのままにしてみた。さつきさんは階段やトイレを利用する時、消毒液とタオルを手に持ち、触れた場所をすべてその場で除菌することにした。家族の食事は、夫がビニール手袋をして、スーパーの総菜類やテークアウトした食事を部屋の前に運んでくれた。物置部屋で息をひそめていると、ごそごそと物音がし、しばらくして「食事を置いた」とLINEがピコンと鳴る。その合図でドアを開けて食事を取るのである。

 「見た目も、家族のコミュニケーションも、自宅が自宅じゃないような不思議な空間になってしまいました。家族も私が無症状なので心配するというよりは、全員が戸惑っているような状況でした」。…

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