コロナが奇貨 福岡発・大人気のスイーツパン「マリトッツォ」 

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
動物性の食材を使わずに作られたビーガン向けのマリトッツォ=アマムダコタン提供
動物性の食材を使わずに作られたビーガン向けのマリトッツォ=アマムダコタン提供

 パンの間に挟まったたっぷりの生クリーム。見た目のインパクト十分の「マリトッツォ」と呼ばれるイタリア発祥のスイーツパンが話題となっている。ブームの火付け役になったと言われるパン屋が福岡市内にあるとの話を耳にした。取材を進めていくと、新型コロナウイルスの感染拡大が誕生のきっかけだったという意外な事実が分かってきた。【山口桂子/西部報道部】

 福岡市中心部にほど近い中央区六本松の大通り沿いの店に連日のように行列ができている。「アマムダコタン」。店名にはアイヌ語などからとったという「小麦のまち」との意味が込められている。2018年11月にオープンしたパン屋で、丸いブリオッシュ生地のパンにはちきれんばかりのたっぷりの生クリームが挟まった「マリトッツォ」が人気商品になっている。

人気の「マリトッツォ」で注目を集めるパン屋「アマムダコタン」=福岡市中央区で2021年5月13日午後3時10分、山口桂子撮影 拡大
人気の「マリトッツォ」で注目を集めるパン屋「アマムダコタン」=福岡市中央区で2021年5月13日午後3時10分、山口桂子撮影

 「マリトッツォ」はイタリア・ローマの伝統スイーツで、夫(イタリア語でマリート)が妻のために買いに走ったのが由来といわれている。

 「マリトッツォ」がアマムダコタンで販売されるようになったのはコロナ禍の20年。インスタグラムの発信に力を入れていた店は、若い世代を中心に多くの客が開店前から列をつくる人気店だった。だが、新型コロナの感染が徐々に増えていった20年3月末、外出自粛の影響から大量の売れ残りが生じ始めた。

イチゴのパンナコッタマリトッツォ=アマムダコタン提供 拡大
イチゴのパンナコッタマリトッツォ=アマムダコタン提供

 そこでオーナーの平子良太さん(37)は、昼食用のパンを買い求めるために午前中に集中していた客を何とか分散化させようと、「おやつ時間帯」を狙った商品の開発を始めた。インターネットでアイデアを探す中、イタリア在住の日本人が発信する記事でローマの郷土菓子である「マリトッツォ」を見つけた。

 平子さん自身、生クリームなど甘い物が大好物。「何とも夢のようなパンだ」。試作を重ねて20年4月ごろから販売。インスタグラムで発信したところ、見た目のインパクトが大きい「マリトッツォ」は瞬く間に拡散され、人気に火が付いた。21年4月にはJR博多駅前に2号店として、パン好きが集まる聖地にとの意味を込めた「ダコメッカ」をオープンさせた。

アマムダコタンで販売されている「マリトッツォ」=同店提供 拡大
アマムダコタンで販売されている「マリトッツォ」=同店提供

 福岡発の「マリトッツォ」のブームは全国に広がった。ベーカリーやレストランなどを各地で幅広く展開する神戸屋(本社・大阪市)も、4月末から「神戸屋ブレッズ福岡パルコ店」(福岡市中央区)で「マリトッツォ」の試行販売を開始。プレーンとマスカルポーネ味の2種(計80個)を販売しているが、連日昼過ぎには完売状態で、担当者は「売れ行きは好調。増産や販路拡大も考えたい」と話す。このほか、「ホテルオークラ東京ベイ」(千葉県浦安市)でも今春からカフェや売店での販売を始めた。福岡県内の他のパン屋でも「マリトッツォ作っています」などの看板が見かけられるなど、その存在は徐々に定着しつつある。

福岡県・八女産のイチジクを使ったマリトッツォ=アマムダコタン提供 拡大
福岡県・八女産のイチジクを使ったマリトッツォ=アマムダコタン提供

 アマムダコタンは、イチゴやイチジクなどのフルーツを挟んだものや、卵を使わないビーガン向けなど、これまで30種ほどの「マリトッツォ」を販売してきた。福岡県で5月12日から3度目の緊急事態宣言が発令されるなどコロナ禍でまだまだ客入りの変動が激しい中、平子さんは廃棄商品を減らすためのパン作りにも力を入れる。作り置きできる日持ちする土台のパンに、一手間加えて商品化したサステナブル(持続可能)なパン「サステナブレッド」を開発するなど、ユニークな取り組みにも挑戦する。コロナ禍での食品ロスを減らすために生まれた「マリトッツォ」。平子さんは言う。「パン屋の枠にとらわれないパン屋。人も社会も、誰もがハッピーになれる店作りをしていきたい」

あわせて読みたい

ニュース特集